13日の船橋競馬8Rで、最後の直線で1度止まった馬が再度走り直して勝利する珍しいできごとがあった。
珍事は中央交流・ベストレイン特別(中央3歳未勝利・南関東サラ3歳、ダート1600メートル、11頭立て)で起こった。ダッシュ良く飛び出した4番人気のグランフィデリオ(牡3)=栗東・森秀行厩舎=がハナに立つと、10頭を引き連れる形で逃げる。2馬身ほどのリードを保って直線に入り、勝利へ向かって一直線に走る…、はずだった。
しかし、残り300メートル付近でグランフィデリオが急ブレーキ。追い上げてきていた6、7頭に一気にかわされた。故障発生か、と思われたが、鞍上の吉原寛人騎手が体勢を立て直すと再加速。内ラチ沿いを鋭く伸びて他馬を次々に抜き返すと、2着馬に1馬身半差をつけて勝利した。
レース後、検量所のモニター前からは「こんなの初めて」、「ゲームみたい」という、関係者の声が漏れ聞こえてきた。当の吉原騎手は「道中からずっとフワフワしていて、少し怖いなと思っていたんです。それで直線に向いたら物見をして急に止まって…。あのタイミングで追い出すと僕が前に転げ落ちてしまうので、いったん手綱を引かざるをえなかったんですよ。でも、すぐに馬が走る気を見せたので、必死に追ったらすごくいい脚を見せてくれて…」と身振り手振りをまじえて話した。
かつてオルフェーヴルが、2012年の阪神大賞典において2周目3コーナー(残り1000メートル付近)で逸走したにもかかわらず、2着まで追い上げたことがあった。しかし、今回は残り300メートルでのできごとで、しかも勝ってしまうという、非常に珍しい事例。記者のみならず、吉原騎手自身も「これまでも止まりそうなことはあったけど、実際に止まって、しかも勝ったのは初めて」と目を丸くしながら話した。ただ最後は神妙な表情で「ごめんなさい。迷惑をかけました」と各騎手に謝罪し、次のレースのパドックに向かった。
なお、この件に関して処分はなく、吉原騎手は裁決委員から口頭で注意を受けるにとどまった。(サンスポ)