外れ馬券は「経費」か否か―。6年間にわたり競馬に約73億円をつぎ込み、約78億円の払戻金を受けた道内の男性公務員(41)が、その差額を上回る税金を請求され、国税当局と争っていることが判明した。男性は、外れ馬券も含めて馬券代すべてが経費だと主張。国税は払戻金の基となる馬券だけが経費だと指摘して譲らない。同様のケースは大阪など各地で法的な論争になっている。国税庁が根拠とする通達は44年前のもので、専門家からは「今の時代に即した法整備が必要」との声もある。
男性は2005~10年、インターネットを利用して、日本中央競馬会(JRA)の馬券計72億7千万円を購入、計78億4千万円の払い戻しを受けた。札幌国税局の税務調査を受けたことから、男性は所得税法上の「雑所得」として外れ馬券も経費に算入し、購入代金を差し引いた計5億7千万円の利益を申告した。
しかし札幌国税局は、国税庁の1970年の通達を論拠に、競馬のもうけは「一時所得」に当たると指摘。この場合、経費と認められるのは「収入を得るために直接かかった金額」である当たり馬券の購入費だけとなる。
国税局は、これらを基に課税対象となる額を約9億8千万円と算定。4億円余りの申告漏れがあったとし、加算税などを含めた追徴税額は男性の実質的な身入りとなった5億7千万円を上回った。男性は一昨年12月、国を相手取って東京地裁に提訴した。
同様な競馬に関する課税で、外れ馬券が経費と認められた先例がある。昨年5月、所得税法違反罪に問われた元男性会社員の刑事判決。会社員は専用の予想ソフトで中央競馬のほぼ全レースの馬券を購入しており、大阪地裁は申告漏れについては有罪としたが、「営利目的で継続的に購入している」と、雑所得となる先物取引や外国為替証拠金取引(FX)の利益と類似性を指摘、税額を減額した。
道内の男性も毎週馬券を購入しているほか、1日で1億円以上を購入したケースもあった。競走馬や騎手の実績や技量についても分析しており「投機的行為に近く、営利を目的とした継続的行為」と主張する。<北海道新聞>