東日本大震災は、競馬界にも多大な影響を与えた。東北地方の場外馬券売り場に被害が出ただけでなく、新宿ウインズも老朽化したビルが閉鎖されるなど、その被害は広範囲に及んだ。福島競馬場の被害はとりわけ深刻で、スタンドの天井や壁が崩落するという建物の被害に加え、福島第1原子力発電所事故による放射能の影響もあり、2011年度の開催は全て中止となった。
◆50億円超える義援金拠出
その福島競馬場に4月7日、実に1年5カ月ぶりに競馬ファンの歓声が戻ってきた。建物の復旧や放射能低減のための芝コースの貼り替えなどに約42億円を要した工事を終えた競馬場には、競馬再開を待ちわびていたファン約1万3000人が訪れた。こうして4月7~29日に開催された第1回福島競馬は「福島復興祈念競馬」として行われ、売り上げの一部は被災地支援のために拠出された。
震災で自らも被災しながらも、競馬はさまざまな形で社会貢献を果たしてきた。福島競馬場では、震災直後から地域住民、被災者最大550人を受け入れたほか、計画避難民100人を受け入れた。また、JRAでは震災発生直後から義援金活動を始め、売り上げの一部を被災地支援のために拠出したほか、被災地支援競走を開催、これまでに総額50億円を超える義援金を拠出することを決定した。
このうち、昨年4月から発売を開始し、2億円の最高払戻金が出たWIN5(指定された5レースの1着をすべて当てる5重勝単勝式馬券)からは、払戻金と国庫納付金を除いた全額の18億2500万円が義援金として拠出された。また、競馬場やウインズ(場外馬券売り場)では、さまざまなチャリティーイベントや募金活動など、復興支援のさまざまな取り組みが現在も引き続き行われている。
◆遠足、盆踊り大会も
JRAの社会貢献は、復興支援だけにとどまらない。競馬の開催を円滑に実施していくためには、地域社会の理解と協力が不可欠であるため、環境整備事業費を設けて競馬開催による交通渋滞などの諸問題の改善に取り組んでいる。
具体的には、周辺の道路整備、公園や学校、保育所の整備などさまざまな事業に使われており、地域社会の環境改善に寄与している。また、レースのない日には、馬場以外の芝生を遠足や写生大会、盆踊り大会などに開放しているほか、馬事公苑や全国の事業所で、馬とのふれあいイベントや初心者、少年団への乗馬指導などの活動を実施している。(SANKEI BIZ)