2014年12月31日水曜日

岩手競馬、売り上げ好走 3年連続で前年超す

 岩手競馬の今年の馬券売上額が250億円を突破し、震災翌年から3年連続で前年を上回った。30日に水沢競馬場であったレースの売り上げも、前年同日を14%上回る約1億6千万円。震災からの復興やインターネット販売の好調が押し上げた。
 「よしよし、そのまま、そのままっ」「差せ、差してくれっ」。12月下旬に訪れた水沢競馬場のスタンドからは、大きな声援が飛んだ。常連に帰省客が加わる年末は、家族連れや若者の姿が目についた。
 家族と親戚の5人で訪れた花巻市の藤村隼人さん(25)は、毎年この時期になると足を運ぶという。妻の穂奈美さん(25)は「生のレースを見られるし、子供が楽しんでくれるので家族でも来やすい」と話す。娘の実梨菜ちゃん(2)は「おうまさん、かわいかった」と話していた。
 友人と2人で来ていた奥州市の小野寺正弥さん(20)にとって、ここは小さい頃に父親と来たなじみの場所。「今では大きなレースがあれば、盛岡競馬場にも行きます。競馬は身近な娯楽ですね」
 2011年。人気低迷が続いていた岩手競馬の売り上げは、震災の影響でピーク時の3割に満たない約146億円まで落ち込んだ。
 被災した競馬場や場外発売所(テレトラック)は、地方競馬全国協会や日本中央競馬会(JRA)などの支援で復旧が進み、震災から2カ月後に盛岡競馬場で、年末には水沢競馬場でレースが再開した。
 翌12年は前年から開催日を15日増やし、売上額は約172億円まで回復。13年はさらに8日増やして、売上額は約216億円に達した。
 12年10月に地方競馬で利用が始まった「IPAT(アイパット)」も売り上げを押しあげた。JRAが02年に導入した携帯電話やパソコンから馬券が買えるシステムで、利用会員は全国で306万人(今年10月現在)に上る。13年度は売上額全体の約10%をIPATが占めた。
 今年10月には、津波で被災し再建されたテレトラック釜石が営業を再開。全施設が復旧を果たした。県競馬組合設立50周年を記念して12年ぶりに盛岡で開かれた、地方競馬の祭典「JBC」の開催日(11月3日)には約29億円を売り上げ、岩手競馬の最高記録を更新。うま年の今年は明るいニュースが続いた。
 県競馬組合の経営管理部・鈴木忠(まこと)参事は「存続するのも厳しいという状況から、安定的な運営になりつつある。これを継続していきたい」と話す。組合は、今年度利益を6億500万円と見込んでいる。
 水沢競馬場は大みそかもレースを開催し、新年は2日から始まる。(朝日新聞)
【写真】寒空の下、多くの来場者がスタンドで馬に声援を送った=水沢競馬場