■アラブ馬 消えゆく運命
■競馬界 40年で1万頭 → 6頭
日本の競馬を支えてきたアラブ馬=キーワード=が姿を消しつつある。40年ほど前は1万頭を超えていたが、時代はサラブレッド全盛に。現役は地方競馬のわずか6頭だ。
馬の血統登録を扱う公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルによると、戦後間もなくは、サラブレッドが足りず、観客の期待に応えられるレース編成が出来なかった。そんな中、アラブ馬は重宝な存在だった。サラブレッドと違い、気性は穏やかで丈夫、粗食にも耐えて扱いやすい。血筋から能力が読みやすく、生産農家や馬主も手堅い経営ができたという。地方競馬に詳しく、アラブ馬主でもある札幌国際大学の大月隆寛教授(民俗学)は「アラブで稼いでサラブレッドで勝負をかける生産農家は多かった」。中央では1950年代に出走馬の3割程度、地方での登録数は70年代前半までサラブレッドを上回る1万2千頭前後に上った。
しかし、人気はスピードに勝り華やかさがあるサラブレッドに集まり、95年には日本中央競馬会(JRA)がアラブ馬単独のレースを廃止。地方競馬も追随した。国内のアラブ馬単独のレースは09年9月27日の福山競馬(広島県福山市)が最後だ。
いまも残る現役はホッカイドウ競馬(北海道)の1頭と福山競馬の5頭。アラブの競走馬の生産は止まっていて、競馬界から姿を消すのは時間の問題だ。
馬産地・北海道では、最後のアラブ馬が約840頭のサラブレッドに闘いを挑み続けている。栗毛の7歳馬「ザラストアラビアン」だ。今月6日夜、門別競馬場(日高町)の最終レースでは、13頭中、最下位。伊藤千尋騎手(26)は「最後は息切れしてしまった」と残念がった。
05年に北海道門別町(現・日高町)で生まれ、当時はアラブ馬が主流だった福山でデビューした。これまで61戦15勝。3年前の国内最後のアラブ馬単独レースは、最後の直線で猛烈に追い上げて接戦を制した。その後、サラブレッドとの混成レースで2勝したが、ここ2年は脚を痛め、勝利から遠のいている。
馬主の鳳山(とりやま)信年さん(46)=広島市=は「衰退する一途のアラブ馬の中で最強になってほしい」と願い、ザ・ラスト(最後の)アラビアンと名付けた。「アラブ馬の全盛期を知る古くからの競馬ファンは懐かしんで応援してくれる。一日でも長く走り、ファンの記憶に残ってほしい」(朝日新聞)
《アラブ馬》
一方、17世紀ごろから、競走馬としての品種改良を重ねてきたのがサラブレッド。世界各国のサラブレッドは父系の血統をさかのぼると3頭に絞られる。