経営不振から一時は存廃論議が持ち上がった名古屋競馬場(名古屋市港区)の2009年度収支が5年連続で黒字となることが分かった。ただ、黒字額は08年度の1億6500万円から200万円へと激減し、いわば“写真判定”の黒字。経営する県競馬組合担当者は「客単価が回復しない限り10年度も厳しい」と話しており、経費削減のための組合議会議員の報酬引き下げ論議が加速しそうだ。
09年度の馬券売上総額は前年度比4・8%増の194億5400万円。地方競馬最大のレース「JBC競走」の開催で売上額は増えたが、同レースに見合ったPR経費や賞金もかさんだ上、不況で全体の客単価が同6・4%減と下がったのが響いた。
売り上げの中身でも、来場者による本場売り上げが同8・9%減だった一方、電話・ネット投票の売り上げが同28・4%増になるなど、利幅の薄い売り上げが増えている。
このため、09年度の実質収支は8000万円ほどの「赤字」に陥っており、組合の財政調整基金から同額を取り崩すことで収支均衡を確保した。ただし、同基金の残高も2200万円まで減るため、10年度はさらに綱渡りの運営を迫られる。
名古屋競馬は04年度まで13年連続で赤字を計上し、存廃論議が浮上。05年度から再建計画が実施され、同年度から連続単年度黒字を計上中だが、累積債務は約37億円に上り、抜本的経営改善にはほど遠い。
一方、組合議決機関の組合議会の議員(県議、名古屋、豊明両市議で構成)には年3日の出席で年間54万~37万2000円の報酬に加え、出席1日当たり9500円の費用弁償を支出。組合には年間で700万円以上の負担となっている。
このため、09年度には一部議員から「報酬を見直さなくてよいのか」と引き下げ提案の声も上がったが、既得権益を主張する議員が続出し、頓挫している。今回、さらに厳しい経営状況が判明したため、報酬引き下げ論議が再燃することは確実で、今月中旬にも組合議員らによる報酬検討委員会が開かれる。(中日新聞)