2011年7月24日日曜日
復興願い 相馬野馬追
「相馬野馬追」が23日、3日間の日程で南相馬市と相馬市で開幕した。
今年は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で、最大の呼び物「甲冑(かっちゅう)競馬」と「神旗争奪戦」が、緊急時避難準備区域内に祭場地があるなどの理由で中止に。馬や武者が被災したため、参加騎馬数も例年の6分の1の約80騎にとどまる。
午前8時半から相馬市の相馬中村神社で行われた出陣式には、羽織はかまやよろい姿の武者らが胸に黒い喪章を付けて参加。ホラ貝の音が響くなか、震災犠牲者に黙とうをささげた後、総大将の相馬行胤(みちたね)さん(37)が「一人ひとりが相馬野馬追の伝統の力を信じ、一日も早く東日本の復興が実現することを念じながら行軍してほしい」と訓示した。続いて約50人が騎乗し、沿道で大勢の見物客が見守るなか、相馬市や南相馬市北部を行進した。
今年初めて甲冑姿で馬に乗った相馬市の会社員三品信吾さん(27)は「大変な状況だったが、多くの人の協力で参加できた。忘れられない野馬追になる」と話していた。
一方、例年なら初日から様々な行事が行われる南相馬市原町区の雲雀ヶ原祭場地には、「来年こそ相馬野馬追を」と書かれた横断幕が掲げられた。
相馬野馬追で例年、最も多くの騎馬武者が出場してきた中ノ郷騎馬会が、震災と福島第一原発事故の影響で出番が失われたことから、「せめて中ノ郷の気持ちを掲げよう」と製作し、19日に掲示した。同騎馬会の中島三喜会長(63)は「今年はやむを得ないが、三神社と五郷の騎馬会がそろってこその相馬野馬追。早い収束を願い、『来年こそは』の思いを込めた」と語った。
24日は南相馬市原町区の相馬太田神社で、25日には、例年の相馬小高神社が警戒区域内にあることから多珂神社で、それぞれ例大祭などが行われるが、いずれも騎馬行進は行われない。(読売新聞)
【写真】相馬市内を行く騎馬武者たち(23日午前)=清水敏明撮影