2012年8月28日火曜日

佐賀競馬、経営改善へムチ 鳥栖移転から40年

 佐賀競馬が佐賀市から鳥栖市に移転して今年で40周年を迎えた。荒尾競馬(熊本県荒尾市)が昨年12月に廃止され、現在では九州唯一の地方競馬不況やレジャーの多様化などで苦戦を強いられ、累積赤字は2億円を超える。昨年度は経費削減策が奏功、3年ぶりに黒字となった。中央競馬会(JRA)と連携を強化し、荒尾のレースを引き継ぎながら経営立て直しに向けて増収策を模索している。
 「うまくいけば一気に収支が改善する」。県競馬組合が大きな期待を寄せるのはJRAとの連携強化による増収策。今秋からJRAのネット会員約300万人に対し、地方競馬の馬券発売が可能になる。県競馬組合は11月から参入予定で、本年度の売り上げ見込みは2億円。期待通りになれば、ほぼ累積赤字を解消できる。
 売り上げ増には「面白いレース」が欠かせない。本年度から騎手免許取得10年未満や通算300勝未満などの限定レースを新設。「本命」が強い佐賀競馬で、「読めないレース」を提供すると同時に、若手騎手の育成も狙う。
 荒尾競馬の廃止後、生産者保護の意味でも佐賀競馬の役割は大きくなった。荒尾で開催されていた九州産馬限定の「霧島賞」と「たんぽぽ賞」は生産者の強い要望もあり、今年から佐賀が引き継ぐ。
 売り上げ増と並行して支出削減にも取り組んでいる。11年度は馬主への賞金を前年度比約15%カット、出走手当も削った。11年度の収入は112億9500万円で前年度比1・2%減、支出は同3%減となり、3400万円の黒字を計上。黒字額を差し引いた累積赤字は、2億1300万円となった。
 経営難に苦しむ地方競馬には、国も支援に動き出している。今年5月、競馬主催者が払戻率を一定の範囲で設定できるようになる競馬法改正案が閣議決定された。運用は数年先だが、多くの地方競馬が払戻率を小さくして支出削減を検討するとみられる。
 自治体の貴重な収入源だった好況時から一転、不況下で公営ギャンブルに向けられる視線は厳しくなっている。売り上げは、ピーク時の3分の1程度に縮小。現時点で公金による補てんはないが、赤字が膨らみ、改善の見通しが立たなければ存廃議論に発展しかねない。
 同組合によると、佐賀競馬の関係者は約1千人で、巨大な雇用の場でもある。同組合の江崎保夫事務局長は「九州唯一の地方競馬であり、多くの人の生活がかかっている。九州競馬の灯を絶やさぬよう、さまざまな手だてを考え、実践していく」と話す。(佐賀新聞)