2013年3月11日月曜日

ホッカイドウ救済に見る「地方競馬の惨状」…一人勝ちJRAとのあまりの〝落差〟


 サラブレッドのほとんどが故郷とする北海道。JRAも2つの競馬場を主催しているが、それとは別に地元に根付いた地方競馬「ホッカイドウ競馬」が裾野を支えてきた。しかし、道が主催するそのホッカイドウ競馬も他の地方競馬同様、長年の赤字続きで存廃の崖っぷちに立つ。さきごろJRAの馬券発売が決まり、黒字への道筋がついたと関係者はホッと一息だが、その現状とは-。
 
待ち望んだ乗り入れ発売
 中央競馬の馬券を今春からホッカイドウ競馬と大井競馬で発売する-とJRAが今月4日、発表した。黒字経営の大井はさておき、万年赤字であえぐホッカイドウ競馬にとってはまさに「救いの手」。JRAとの乗り入れ発売を起死回生策にしたいというのは、長年の夢だった。
 全国にファンがいるJRAの馬券は売れ行きがいい。その発売を代行すれば「業務協力金」という名目で委託料が入ってくる。自前の馬券が不調なホッカイドウ競馬にとっては経営の大きな柱としてノドから手が出るほど欲しかった収入源なのである。
 ただし、手放しでは喜べない。大金持ちのJRAは場外馬券売り場などを設置する際、入念に地元と協議を重ね、駐車場整備や警備態勢など過剰と思われるほど資金を投入する。その流れで乗り入れ発売する地方競馬にも同レベルを求める傾向が強い。足腰の弱っているホッカイドウ競馬にはこれが骨だった。
この問題は、すでに昨春の道議会で取り上げられており、農政部長が答弁に立ち「できる限り多くの場外で発売が可能となるよう調整したい」と奥歯にモノの挟まった物言いをしたが、理由はここだった。
 
赤字で地方競馬は死屍累々
 2兆円超の売り上げを誇る巨人JRAばかり見ているとわかりにくいが、地方競馬の運営は大井など一部を除けばどこも火の車である。レジャーの多様化のせいだとか、不景気のせいだとか原因はいろいろ言われているが、結果としてどこも赤字が大きく累積している。
 経営難で今月24日の開催を最後に廃止となる福山競馬(広島県)。ここも数年前から存廃を議論され、とうとう黒字が出せず主催の市は努力を断念した。
 バブル崩壊以後、立て続けに地方競馬が廃止されていったのはご存じの通り。2000年以降を見ただけでも、中津(大分県)▽新潟▽三条(新潟県)▽益田(島根県)▽かみのやま(山形県)▽足利(栃木県)▽高崎(群馬県)▽宇都宮(栃木県)…と、これだけある。かつて競馬が元気だったころは、億単位の売り上げを誇り地方財政に大きな貢献をしてきたが、経営難に陥るとあっさり切り捨てられてきた。
 一方、JRAは同時期、わが世の春を謳歌(おうか)していた。最盛期に比べれば見劣るにしても、常に黒字をたたき出し、大レースになればスタンドは満員。ファンより係員の数の方が多いといわれる地方競馬とは別世界だった。
同じ競馬なんだから、援助の手を差し伸べたら? 誰もが思うことだが、JRAの腰は重かった。前述の通り地方の競馬場がバタバタ倒れていくのを横目で見つつ、とっかかりの馬券乗り入れ発売さえ、延々と協議と調整ばかりを繰り返していた。
 中でも赤字額で群を抜くのがホッカイドウ競馬。2011年度末の単年度赤字は約2億4000万円。計算方法を変更したためデータが少し古いが、09年度末で累積赤字は約240億円。01年から道による再建計画がスタートしたものの道は険しい。「単年度収支が均衡しなければ廃止」という高いハードルを道議会から突きつけられつつ、年度末になると恒例行事のように存続が協議される。まさにそんな“崖っぷち”の状況が続いている。
 この間、道サイドは赤字返上に最も効果が期待できるJRAの馬券発売を熱望していたのに、決まったのはやっと今月。いかにJRAの腰が重かったかが分かる。
 ある競馬関係者は「日本でもっとも牧場が多い馬産地の競馬がなくなるのはイメージ的にも悪いし、中央競馬にとってもマイナスだ。ホッカイドウ競馬が廃止になれば、共倒れする牧場だって多いのに…」とJRAの対応の遅さに苦言を呈する。
 ようやく実現したJRAの馬券発売が馬産地の競馬を救うことができるか。今後に注目だ。