2010年7月9日金曜日
高校生生産ヒュウガ夢はダービー
小さな高校の大きな夢が再び動きだした。静内農業高(北海道新ひだか町)生産のゴーゴーヒュウガ(牡2、栗東・須貝尚、父スズカマンボ)が、10日(土)の函館芝1800メートルでデビューする。日本で唯一サラブレッドの生産育成を授業に取り入れている高校で、過去6頭を競馬場に送り込んだ。5年ぶりに誕生した牡馬に託す夢は、もちろん最高峰のダービーだ。
胸の高鳴りが、日増しに大きくなってくる。授業にサラブレッドの育成を取り入れる静内農業高生産のゴーゴーヒュウガのデビューを、高校生が心待ちにしている。99年からサラブレッドの生産を始めて9頭目。5年ぶりの牡馬とあって期待が高まる。同校馬術部の草なぎ孝洋繁殖部長(生産科学科3年=「なぎ」は弓へんに前の旧字体その下は刀)は「体が弱くて苦労した馬。デビューできてうれしい。今は期待と不安の半々です」と初々しく話した。
実習作業は生産科の生徒、馬術部のメンバーで行う。出産こそ安産だったとはいえ、「彪牙(ひゅうが)」と名付けられた鹿毛馬は虚弱体質で育成は苦労の連続だった。08年の当歳セリを骨端炎で辞退するなど脚元が弱く、運動をするとすぐに脚に熱を持った。水で冷やしても引かず、教師と生徒で話し合い、額に乗せて熱を冷ます人間用のゲル状保冷剤を購入。生徒4人で15分間脚元を冷やし続けることが日課になった。夜間に脚をケガして病院に駆け込み、寝ずに見守り続けたこともあった。
下痢が続くとカイバの研究にいそしんだ。悩みは尽きず、草なぎ部長は眠れない日々が続いた。1歳になるとようやく成長し、09年のセリで落札されると全員で号泣した。価格は260万円。「本当にうれしかった。生産の難しさ、命の大切さを、馬を通して教わりました」と振り返る。
6月25日に世話をする馬術部4人と生産科学科の杉本忠宏教諭(40)が函館競馬場を訪れ、久々の再会を果たした。「昔はガリガリだったのに力強くなった。カイバを食べているし、期待を抱かせますね」と杉本教諭。別馬のようになった愛馬がたくましく映った。
デビューする10日は生徒34人が函館競馬場に応援に駆けつける。草なぎ部長は「まずは無事に走ってほしい。いつかダービーをの夢をつないでいきたい」。汚れなき大きな夢を背負ってゴーゴーヒュウガが堂々、ターフに立つ。(日刊スポーツ)
【写真】今週デビューするゴーゴーヒュウガ