2010年8月24日火曜日

福山市営競馬 存続か廃止か最終局面へ

 約20億円の累積赤字を抱える広島県福山市営競馬の存廃を審議してきた市競馬検討委員会(吉原龍介委員長)が、25日にも結論を出す見通しだ。廃止なら、約700人にのぼるとされる騎手、調教師ら関係者の再雇用や補償など、さらに難しい問題が待ち構える。存続したとしても、経費削減などのあおりで関係者が大幅な減収を強いられるのは必至で、存廃問題は厳しい選択を迫られている。
 お盆の15日、福山競馬場は大勢のファンでにぎわった。この日の入場者は2358人。今年度ではかなり多かったが、ほとんどが中高年の男性客で、女性や若者は数えるほど。ファンの高齢化は顕著だ。
 市によると、入場者は昭和49年度、収入は平成3年度をピークに年々減少しており、20年度はそれぞれピーク時の18%、23%にまで落ち込んでいる。
 このため、市はさまざまな振興策を講じてきた。最近では連携先の高知競馬所属の騎手・競走馬によるレースを全国初の試みとして実施。お盆には家族連れをターゲットにしたイベントを開いた。
 一方で、賞金や出走手当など「賞典奨励費」の引き下げなど経費削減策にも取り組んできた。それでも減少に歯止めがかからず、今年度第1四半期(4~6月)の収支は基金約2600万円を繰り入れても500万円近い赤字だ。
 存廃を審議する検討委は、競馬法に定める「地方財政への寄与」を事業運営の基本とし、「これ以上、赤字が続くなら継続すべきでない」というスタンス。つまり、基金からの繰り入れをせずに、収支が赤字とならない「実質単年度収支の均衡」を存続の前提として論議を交わしてきた。
 この結果、今年度末で廃止するか、賞典奨励費を中心に経費を削減し単年度黒字が見込めなくなったら廃止する-を軸に最終協議に臨む。
 現場関係者らは「この仕事しかない」「絶対にやめたくない」と一貫して訴える。県調騎会、県厩務員会、県馬主会など関係8団体は存続に向けて要望書を提出する一方、検討委の会合でも各団体の代表が決意を述べた。
 各団体とも厳しい現状を認識し、現場代表の委員は収入源の賞典奨励費の引き下げも「覚悟している」と陳述。市の試算でも、来年度は騎手の年収が最大90万円の削減となる。
 検討委の委員も務める渡辺貞夫・県調騎会会長は「削減はやむを得ないが、他にもカットできるものがあるはず。現場だけに押しつけるのではなく、もっと現場の実態を知って具体的な議論を」と苦言を呈する。
 福山競馬の存廃問題は有効な打開策を見いだせないまま、最終局面を迎えようとしている。(産経新聞)