昨年12月23日に、荒尾競馬(熊本県荒尾市)が83年の歴史に幕を下ろしてからまもなく3カ月。九州唯一の地方競馬となった佐賀競馬(鳥栖市江島町)でも、経営難に陥った荒尾同様、レジャーの多様化や景気の低迷を背景に、2年連続の赤字となるなど苦しんでいる。佐賀競馬を運営する県競馬組合(管理者・坂井浩毅副知事)では、荒尾の“財産”も取り込みながら、巻き返しに取り組んでいる。
荒尾競馬廃止の影響は佐賀競馬にどのように表れているのか。1月の佐賀競馬全体の売り上げは前年同月比で9.6%増となったが、馬券のインターネット販売の増加などが要因。佐賀競馬の本場のみの売り上げは前年同月比4.0%減、来場者も同2.6%減の2万6601人で、荒尾競馬の廃止で「荒尾のファンが佐賀に足を運ぶのでは」との予測もあったが、まだそうとは言い難い状況だ。同組合の渕上忠博管理課長は「長期的に見てみないと荒尾競馬廃止の影響は分からない」と話す。
一方で、佐賀競馬の懸案だった荒尾競馬での場外馬券発売の継続については一定のめどが付いた。佐賀競馬の2010年度の馬券売り上げ約104億円のうち、約12億7千万円を占めた荒尾での場外発売。同組合は荒尾市に発売継続を求めてきたが、12年度は同市が委託する民間企業が運営する見通しだ。同組合は「13年度以降の継続も同市に強く要請していく」としている。
◇ ◇
「受け入れてくれた佐賀競馬の関係者、ファンに感謝でいっぱい」。1月に荒尾競馬から移籍後初勝利を挙げた岩永千明騎手(29)にファンが熱い声援を送った。白石町出身、佐賀競馬では14年ぶりの女性騎手としてレースを盛り上げている。
魅力あるレースづくりを模索する同組合に、荒尾から移籍した約100頭の馬も好影響を及ぼしている。佐賀が抱える競走馬が計約570頭と増えた分、1レース当たりの出走頭数も増えた。頭数増は、レース展開の多様化や高額配当にも結び付く。
また、荒尾で開催されていた人気レースの佐賀での実施も目指している。九州産馬交流競走の「霧島賞」と「たんぽぽ賞」が開けるよう現在、日本中央競馬会(JRA)と協議を重ねている。
◇ ◇
活性化策はレース内容だけでなく、馬券の充実にも取り組む。注目は全国初の取り組みとなる指定した7つのレースの1着馬すべてを当てる馬券「7重勝」。7重勝は現行の競馬法で認められていないが、同組合が昨年、特定地域のみ国の規制を緩和する「構造改革特区」の申請を行って認められた。「かなりの高額配当が期待でき、人気を呼ぶのでは」と渕上管理課長は期待を寄せる。早ければ4月から、ネットを通して販売するという。
ネットでの馬券販売が伸びていることを受け、販売経路の拡大にも取り組む。地方競馬の主要レースがJRAのネット投票システムで全国発売されることになり、佐賀でも佐賀記念やサマーチャンピオンなどの重賞レースを対象に今年11月以降にも始める予定だ。
本年度の売り上げは、3年ぶりの黒字も見えてきている。今後、各種の打開策が奏功するか、ファンや関係者は注目している。(西日本新聞)