低迷が続く地方競馬を盛り返そうと、各地の競馬場があの手この手の集客作戦を展開している。仕事帰りの会社員や女性を呼び込むため、ナイター営業に乗り出したり、場内で婚活イベントを開催したり。新たなファン層の開拓が狙いだ。
◆日中より3割増
1930年に営業を始めた兵庫県尼崎市の園田競馬。昨年度の売り上げはピーク時の3分の1の314億円で、入場者の約7割が50歳以上だ。主催の同県競馬組合は2014年度までに回復の兆しがなければ事業廃止を検討するとしている。
こうした現状を打破するため、園田競馬は約9億円を投じて関西初のナイター施設を今年設置。照明約450基を新設し、トイレを和式から洋式に改修、分煙も徹底した。
毎週金曜の夜間開催を9月7日から始め、会社帰りのグループなどが観戦する光景が定着した。10月5日、仕事を終えて同僚3人と立ち寄った神戸市灘区の会社員橋口博史さん(31)は「ライトに照らされた馬の体が光ってきれい。ビール片手に楽しめるので別の同僚も誘ってまた来たい」と話す。11月9日まで計10回開かれるが、当初5回の平均入場者は、日中の開催より3割以上多い4700人に上っている。
同組合は夜間開催にあたり、周辺住民らにも配慮。最寄りの阪急神戸線園田駅との間を最大10台の臨時バスで結び、住宅街がファンであふれないようにする。同組合関係者は「都市部の立地を生かし、明るく安全・安心な競馬場に変身し、危機を乗り越えたい」と語る。
ナイターレースは帯広競馬場(北海道帯広市)のばんえい競馬で07年から実施されるなど、東日本の競馬場でも人気を集めている。
◆「お役所」脱却
地方競馬は自治体が経営に携わり、収益は公共施設の整備などに充てられてきた。運営面では、給与や人員の削減など大胆なリストラに踏み切れず、<お役所的>発想から抜け出すことが課題だった。
かつて、デビュー以来113連敗を記録した「ハルウララ」の人気に沸いた高知競馬(高知市)は、ブームが去った後、全国初となる通年の「夜さ恋ナイター」を09年7月に始めた。馬券のインターネット販売で全国のファンをつかみ、売り上げは09年度の55億円から11年度に71億円と回復。さらに婚活イベントを企画して<夜のデートスポット>としてPRするなど、収益向上を目指している。
福山競馬(広島県福山市)では、馬主や調教師、厩務員らが「福山競馬振興協議会」を7月に設立し、支援会員の募集も始めた。11月下旬に最初のイベントを開く。広島カープの選手にレース勝者へのプレゼンターを務めてもらい、大学生によるバンド演奏も行う。
金沢競馬(金沢市)でも、調教師や厩務員らが09年末、「金沢ちびうま団」を結成。競輪選手らがダートでポニーと競う“異種競技”などを仕掛ける。石川県競馬事業局は「地道な努力を積み重ねれば、いつかは客足が戻るはず」とする。
大井(東京都品川区)、川崎(川崎市)など関東の4か所の地方競馬場は今月、各競馬場の馬券を集めると賞品をもらえるスタンプラリーを共同実施している。
地方競馬全国協会(東京)によると、地方競馬は全国16か所で運営されている。売上総額は、1991年度で1兆円近かったが、2011年度は3314億円に減少。入場者も1000万人以上減って11年度は371万人に落ち込んだ。<読売新聞>