■単複が80%の払戻率に変更
2012年6月27日、払戻率の弾力化などを目的として、競馬法が一部改正され、いよいよ今年の4月1日から、まずは地方競馬で施行される。3月8日現在、大井、川崎、岩手、愛知、笠松、金沢、兵庫、高知、佐賀の9カ所が、払戻率を発表している。現在は平均で74〜75%程度だが、単複は全主催者80%に変更される(馬単は75%、3連単は72.5%となるなど他の賭式では多少の上下がある)。
特に、兵庫は他の主催者より発表が1週間遅れたが、JRAの払戻率発表後、地方競馬IPAT発売などのインターネット投票への対応も考慮した形で、JRAと同率での発表となった(枠複、馬複、ワイドが77.5%、3連複は75%)。どの主催者も、併せて約74〜75%の払戻率となり、いわゆる"テラ銭"(運営サイドの手数料)は、今までと、さほど変わらない。
■払戻率を下げた3連単 上げた単複の理由
では、今までと何が違うのか? 1990年までは単勝、複勝、枠複の3種類しかなかった勝馬投票券だが、現在は馬複、ワイド、馬単、3連複、3連単、5重勝と馬券の種類が増えた(一部主催者で7重勝も実施)。馬券の種類が増えていく過程で、高配当の魅力から、1着から3着まで順番通り当てる「3連単」のシェアが現在でも最も高い。
「3連単を導入したことで、的中を狙えば買い目が増えてしまうし、その分金額がかさむ。だが、1日に使えるお金は限られているから、そこで外れてしまうとジ・エンド。だから、レースを絞る形になるし、馬券が売れなくなるのも頷ける」といったコメントを、ファンの方や馬産地の関係者などからよく聞く。
もちろん、馬券の種類は増えても、選択するのはファンだから、わざわざ難しい馬券に手出しする必要はない。臨機応変で考えれば良いわけだが、新聞などのマスコミも「3連単高配当的中!」と謳いたい思いもあり、どうしても3連単を推す風潮がある。そういった面で今回、シェアが多い3連単の払戻率を下げたことは、主催者としての収益を確保する上で当然の施策と言える。
■3連単から“当てやすい馬券”へのシフト
一方で、1頭だけを考える、また2頭を着順通り考える必要のない、的中しやすい馬券の払戻率を上げる主催者が多いことは、当てやすい馬券にファンをシフトさせ、絞られた1レースを楽しむ流れから、より長い時間、競馬を楽しむことができる方向へと導き、ビギナーファンの参入や定着化を目指していく狙いがある。
■オートレースは払戻率を下げ売上げ減少
他の公営競技の例で言えば、オートレースは2012年、払戻率を単純に75%から70%に引き下げられた。これが売り上げの減少にはつながり、その後の1年は、概ね前年同月比で83.5%で推移していた。主催者の収益とすれば、今までより5%分多く見入りがあるので、売上減が大きく響くことはなく、この施策は決して間違った方向性ではなかったかもしれない。しかし、ジャンルを問わず公営4競技を楽しむファンからすれば、配当の妙味が薄れ、オートから離れてしまう可能性もあり、そういう意味では、大きな賭けをしたと言っていいだろう。
■控除率を下げることが売上増には結びつかない?
かつては「控除率を下げること(払戻率を上げる)が、ファンに対する最大のサービス」と言われてきたが、これまでもJRAでは単勝と複勝は約80%での払戻率にしていたり、特定レースに限定した5%上乗せレースを実施するなど、その声に応えてきた面はあるが、実際のところ大きな売上増には結びついていない。
オートレースと違い、賭式ごとに払戻率を変え、しかも複雑だった払戻金の算出方法から一定率で払戻金が算出されるようにもなり、ファンにとってはわかりやすくなった。とはいえ、払戻率が上がった下がったと言っても、結局のところ的中しなければ、その損得勘定をすることはできない。原点回帰して、払戻率が上がった的中しやすい馬券へシフトし、1990年までの若かりし頃、熱く競馬にハマった時を思い出してもいいかもしれない。(The page)