どんなに早く強い競走馬でも、加齢による衰えがくれば競馬場を去らなければならない。全国では年間7千頭もの競走馬がデビューする一方で、同じ数の競走馬がひっそりと引退していく。活躍した競走馬には次の競走馬を生み、育てるという新しい役割が待っている。
また、誘導馬や乗馬に転じたり、中には馬主らの配慮で牧場に引き取られ、静かに余生を送る競走馬もいる。でも、これらのケースはほんの一握りの恵まれた競走馬で、ほとんどが廃用の道をたどる。
川崎競馬場ではせめて、重賞勝ちした競走馬が引退する際にはセレモニーを行い、長くファンの記憶にとどまるように努めている。
競走馬だけではない。調教師や騎手、厩務員ら厩舎関係者も競馬場を離れる時が必ず来る。定年はないが現場での肉体労働だけに、気力があっても体がついていかない。24時間、ほぼ付きっきりで世話し、未明から調教に励む。成績が上がらなければ、馬主との軋轢に苦しむ上、家計を直撃する。中でも騎手は、日々、体重調整に悩み、落馬による怪我も絶えない。それでも、競走馬も厩舎関係者も、みんな「引退」の二文字と闘いながら、今日も競馬に挑んでいる。(神奈川新聞)