JR福山駅から南に約2・5キロ。通称・駅前大通りが緩やかにカーブする辺り、福山市千代田町に市営競馬場はある。そばには広い河川敷を持つ芦田川が流れ、のどかな雰囲気が漂う。戦後間もない1949年に開設されて以来、62年。これまで数多くのドラマを生み、市の財政にも寄与しながら、競馬ファンの夢に応えて来た。
しかし、公営ギャンブルの不振などで売り上げは伸びず、今は20億円を超える累積赤字に苦しむ。羽田皓市長の決断で、取りあえずは2011年度の事業継続が決まったが、単年度実質赤字になれば年度途中での“打ち切り宣言”もあり得るだけに、予断を許さない。
市街地の一角とは思えないほどの広大な面積(15万2400平方メートル)を誇り、レースは1周1000メートルのダートコースで年間約90日、行われる。692の馬房があるが、2月初めの在籍頭数は「魅力あるレースを組むにはぎりぎり」(市競馬事務局)という341頭。実に半分以上はあるじ不在の状態だ。
事業継続に向け、市競馬事務局は、広島市内のバス会社と協力して観戦ツアーを組んだり、競馬場の来賓席を若者の婚活パーティーの会場にしたりと知恵を絞る。11年度は利用しやすいよう、開催時間の繰り下げも計画している。
渡辺貞夫・県調騎会長も「ファンあっての競馬場ということを念頭に、他の競馬場との交流レースや厩舎(きゅうしゃ)見学など、少しでも魅力を伝えられるよう、市と協力していきたい」と力を込める。
11年度を“最終レース”としないためにも、官民一体となった総力戦が求められる。(読売新聞)