荒尾競馬(熊本県荒尾市)が本年度限りで廃止されることになり、佐賀競馬(佐賀県鳥栖市)への余波が懸念されている。荒尾競馬とは交流競走開催や場外馬券発売など経営資源の共有化を進めており、売り上げ減などマイナスの影響は避けられない見通し。佐賀競馬を運営する県競馬組合(管理者・坂井浩毅副知事)は、荒尾廃止後の来年4月以降も場外馬券発売の継続を荒尾市に要請する方針だが実現は不透明で、早急な対応が求められている。
「荒尾競馬は本当に廃止されるのか」「佐賀競馬にはどのような影響が出るのか」-。8月29日、佐賀競馬で開かれた県競馬組合の定例議会。4日前に本紙が報じた「荒尾競馬廃止へ」を受け、出席者から質問が相次いだ。
佐賀と荒尾は10年ほど前から、双方のレースを対象とした場外馬券の発売を開始。2010年度、荒尾で発売された佐賀のレースの売り上げは約12億7千万円で、10年度の佐賀競馬全体の売上高(約104億円)の1割超を占めた。
「荒尾廃止」に動揺を隠せない佐賀の関係者たち。定例議会で、組合事務局の担当者はこう認めるしかなかった。「場外馬券の売り上げがなくなると、影響はかなり出てくる」
72年に開設された佐賀競馬の売上高は91年度の約359億円がピーク。レジャー多様化や景気低迷を背景に、その後は減少の一途をたどっている。
減収を受け、県競馬組合は馬主に払う出走手当のカットなどコスト削減を進めてきたが、収益の改善には至らず、過去10年間で黒字運営は02年度と08年度だけ。貯金に当たる「財政調整積立金」は06年に底をつき、累積赤字は約2億4千万円(10年度末)に膨らんだ。
荒尾での場外馬券発売は貴重な収入源。だが、荒尾市は12月中にレースを終了し、場外販売は来年3月まで続けることを示すにとどまる。同組合の渕上忠博管理課長は「荒尾市には存続を強く働き掛ける」と語る。
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佐賀と荒尾は昨年10月から、互いの競走馬を行き来させる「交流競走」を始めた。「バラエティーに富んだレースに加え、東京や大阪向けの広報活動の強化」(同組合)が奏功し、本年度の佐賀の売り上げ(今月11日まで)は前年同期比6・6%増と好調。とりわけ、インターネット販売が30%近く伸びているという。
交流競走の成果が目に見える形で出てきた直後に浮上した荒尾の廃止決定。渕上課長も「非常に残念」と頭を抱えるが、荒尾廃止後、さらなる経営改善に加え、佐賀が九州唯一の地方競馬として“脚光”を浴びる可能性に期待したいという。
「中央競馬、地方競馬との交流競走を充実させて、競馬場で直接レースを見るファンを増やしたい」(西日本新聞朝刊)