2011年11月8日火曜日
荒尾所属 騎手目指す小山さん 佐賀競馬でデビューへ
荒尾競馬で騎手を目指し、廃止決定後も研修を続けている小山紗知伽(さちか)さん(17)が佐賀競馬(佐賀県鳥栖市)でデビューすることになった。7日、来年1月の移籍が確定した。「途切れかけた夢がつながった」。荒尾市の廃止表明から2カ月、小山さんに笑顔が戻った。
「あの日がずっと昔に感じる」。あの日とは荒尾廃止が報じられた8月末のこと。競走馬の調教の途中、朝刊の内容を知らされ、またがっていた馬の背で泣き崩れた。
大の動物好き。2年前、進路を考える参考のために訪れた荒尾競馬で、紅一点の岩永千明騎手(29)にあこがれを抱いた。熊本市の中学卒業後、栃木県の養成所に入り、馬の世話と騎乗に明け暮れた。午前4時から夜まで、同期生の半数が脱落する厳しい訓練に耐え、今年8月、養成課程を締めくくる荒尾での実地研修にたどり着いた。
来春、デビューするはずだった夢の舞台は突然奪われた。「しばらく何も考えられなかった」という当時を、「あの日」と穏やかに振り返ることができるのは「馬に助けられた」からだという。
馬は毎日、小山さんの泣き腫らした目をのぞき込み、慰めるように顔をなめた。「私だけくよくよしていても何も始まらない」。前を向く気持ちが少しずつ生まれた。
佐賀へは研修先の幣旗(へいはた)吉昭厩舎(きゅうしゃ)の一員として移る。家族同然の幣旗調教師や厩務(きゅうむ)員たち。小山さんは「人見知りの私がすぐにうち解けることができた。荒尾の人たちがいれば大丈夫」と笑顔を浮かべる。荒尾からはほかに二つの厩舎が移籍する。
古里でデビューするという目標は断たれたが、馬が支えてくれた。「馬の気性に合わせた騎乗ができる“馬と話せるジョッキー”になる」。この2カ月で見つけた新たな目標だ。(西日本新聞)
【写真】佐賀競馬への移籍が決まり、笑顔で騎乗する小山紗知伽さん