地方自治体が手掛ける各地の地方競馬が経営難で存続の危機にある中、荒尾競馬(熊本県荒尾市)と佐賀競馬(佐賀県鳥栖市)が、10月末から毎月5レース程度、競走馬を行き来させて「交流レース」を開催することが7日分かった。「自治体単位」が原則だった地方競馬の「地域ブロック化」により、人や馬といった経営資源を共有しコスト削減を図る生き残り策。地方競馬全国協会(東京)によると、定期的な交流レースの形で経営効率化を図るのは全国初の試みという。
地方競馬は長年、主催する自治体の貴重な収入源だったが、近年はレジャーの多様化などで採算性が悪化。大分県の中津競馬の撤退(2001年度)など各地で閉鎖が相次いでいる。協会は今回の“九州競馬”をモデル事業として、両競馬場間の馬の輸送費を全額負担して支援する。今回の試みが好評なら、11年度以降、ブロック化を全国展開したい考えだ。
09年度現在、地方競馬の主催者は全国に16あるが、9主催者が累積赤字を抱える。荒尾競馬の累積赤字は約14億円、佐賀も約6800万円に上る。協会によると、ブロック化は出走馬や施設の共同利用によるコスト削減のほか、互いのレースへの出走頭数が増える分、バラエティーに富んだレース編成が可能になり、ファン層拡大や収益アップが期待できるという。
レースは通常の3分の2にあたる千メートルの超短距離となる見通し。両競馬場の出走馬に多少の力の差があっても、勝敗を読みにくくするためだ。荒尾、佐賀の両競馬組合は「“九州競馬”が先進例になって地方競馬の活性化の流れをつくりたい」としている。
■地方競馬
1948年施行の競馬法に基づき、地方自治体が一部事務組合を設立するなどして運営する。監督官庁は農林水産省。地方競馬全国協会が、競走馬の登録業務などを担当する。売り上げの約75%が馬券購入者への配当金で、残りが主催者側の収入。政府が資本金全額を出資する日本中央競馬会(JRA)による中央競馬に比べ、経営基盤が弱い分、賞金水準は低く優秀な馬は集まりにくい。(西日本新聞朝刊)