2011年4月19日火曜日

福島競馬場、爪痕深く 春の開催中止、夏も困難

 日本中央競馬会(JRA)の福島競馬場(福島市)が東日本大震災で施設に大きな被害を受け、開催の見通しが立っていない。今月9日に始まる予定だった春の競馬は中止となり、馬券の販売や払い戻しができない状態も続く。JRAは復旧を急いでいるが、6月18日からの夏の競馬も開催できない可能性が高いという。

 3月11日の地震では、観客席の天井が崩れ落ちた。レース前に競走馬が周回するパドックには割れたガラス片が飛び散り、スプリンクラーが作動して水浸しになった場所もあった。馬券の発売やレースを管理するコンピューターシステムも故障した。
 翌12日に場内を見回った野瀬義紀総務係長は「建物が倒壊する危険性はないものの、あちこちでかなりの被害が出た。レースの最中でなくて本当に良かった」と振り返る。今月7日の余震で被害が拡大したという。
 JRAの競馬場としては、1995年の阪神大震災で阪神競馬場(兵庫県宝塚市)が被災し、約半年間レースができなかったことがある。
 福島競馬場はレースができない上、システムの故障により場外馬券場としての営業もできないため、損害は「かなりの額に上る」(JRA関係者)という。今月23日に行われる予定だった重賞(GⅢ)レースの福島牝馬ステークスは、新潟競馬場で代替開催される。
 被害が大きかった一方で、避難所としての役割を果たした。南相馬市など福島県浜通り地方などから約550人の避難者を受け入れ、騎手がレース前に宿泊する部屋や、馬を世話する厩務(きゅうむ)員室を提供した。福島市との防災協定に基づき、競馬場地下の貯水タンクなどから水も供給した。
 福島競馬場には、競馬ファンから「避難のストレスを競馬で発散したい」「馬が走る姿を早く見たい」など、再開を願う電話が100件以上寄せられている。
 野瀬係長は「避難者の受け入れなど、地域に貢献できたことが唯一の救いだった。少しでも早く再開して、苦難が続く福島県に多くの人を集めたい」と話す。
 福島競馬場では10月22日から、秋の開催が予定されている。(河北新報)
【写真】東日本震災で崩れ落ちた福島競馬場の観客席の天井。JRAは復旧を急ぐが、レース開催の見通しは立っていない=3月13日(福島競馬場撮影)