公営ギャンブルの存続へ納税者の理解が得られるかどうか。ハードルは高くなっていると言わなくてはなるまい。
存続か、廃止か、そのはざまで揺れてきた福山競馬について、福山市の羽田皓市長は本年度末の廃止を正式表明した。2002年に益田市の益田競馬が55年の歴史を閉じており、これで中国地方からすべての競馬場が姿を消す。福山競馬は1949年に開設され、68年から福山市の単独開催に移行する。これまでに約400億円を市財政に繰り入れ、学校やスポーツ、文化施設の建設などに貢献してきたことは評価されよう。
しかし、レジャーの多様化や景気の低迷により、公営ギャンブルを取り巻く環境は次第に厳しくなった。98年度からは収益を繰り入れできなくなり、赤字は約19億円と累積している。
今も500人余りの雇用の場であり、安易な切り捨ては過去できなかったのだろう。関係者はぎりぎりまで活路を探ってきたに違いない。
先月から日本中央競馬会(JRA)会員向けインターネット馬券購入システムを採用した。出走頭数を増やしてレースを活性化させようと、馬主会が競走馬30頭を買い入れる計画が浮上、女性騎手の期間限定の参入も話題になっている。
しかし、公営ギャンブルは収益を自治体財政に繰り入れる点に存在意義があったはずだ。赤字を一般会計から穴埋めして事業を維持し続けるようなら、納税者の理解は得られまい。
福山競馬は実質単年度収支の黒字が困難になったうえ、地方競馬全国協会の補助金の総額が来年度は大幅減額される見通しになった。有識者の検討委員会はおととし、「速やかな廃止」を前提に、単年度黒字を確保できる場合に限って継続するよう、答申していた。
熊本県の荒尾競馬の例だと、単年度黒字だったものの、今後の経営改善を見通せないため廃止にしたほどだ。福山競馬の廃止表明はやむを得ない決断だったのではなかろうか。
地域経済が疲弊する中で今後は厩務(きゅうむ)員らの雇用問題が浮上する。競馬関係の職場への再就職希望もあろう。市はあらゆる手だてを講じてほしい。
公営ギャンブルの是非は社会道徳の視点から論じられたこともある。それを別にしても、自治体の事業のままでは民間のような経営感覚は期待しにくい。
北海道帯広市の「ばんえい競馬」は運営の民間委託で生き残りを図り、観光PRにも力を入れているようだ。
しかし、一般にはまちづくりの中での観光資源としての位置付けは弱かったのではないか。「みるスポーツ」として若者や女性を引きつける魅力に乏しかった現実があろう。
広島市の広島競輪も廃止も含めた事業の在り方の検討に入っている。今後10年の収支見通しは厳しく、築40年を超える施設の改修も避けて通れない。
一方、廃止となった場合、地元への経済効果や雇用への影響を推し量ることに加え、跡地利用も長期的なまちづくりのビジョンを持って当たらなければならない。広大な公有地が場当たり的に売却されることは避けたい。これは福山競馬の跡地利用も同じであろう。(中国新聞)