福山市が福山競馬の来年3月末での廃止を決めたのを受け、競馬場がある約15ヘクタールの市有地の活用策が課題に浮上している。厳しい経済状況が続く中、既に廃止されたほかの地方競馬場では、利用の道筋がすぐにつかないケースが目立つ。市は競馬関係者の雇用対策を最優先とし、跡地活用は「白紙」としている。
福山競馬場は1949年、JR福山駅南約3キロの芦田川東岸の市有地に造られた。施設東側に面する市道の路線価(7月発表)は1平方メートル当たり7万円前後。単純計算すれば約15ヘクタールの市有地は100億円以上の価値になる。
「中心市街地に残る最後の広大地」。羽田皓市長は27日の記者会見で跡地をこう表現し、続けた。「(2016年の)市制施行100周年をにらみ、市に資する活用を検討する」
地方競馬場を既に廃止したほかの自治体も広大な跡地を「未来のまちづくりの核」として活用策を探っているが、数年でめどをつけるのは容易ではない。
群馬県の高崎競馬場廃止から8年後の今年、コンベンション施設の整備を決めた同県は「中心部で立地が良い分、意見集約に時間がかかった」という。長年の大学誘致を昨年度諦めた栃木県足利市は「経済情勢と少子高齢化が厳しく、練り直し」と嘆く。
益田市は約8ヘクタールを市土地開発公社に競馬の累積赤字約15億円と同額で売ったが、公社は「分譲で売れたのは2割。広すぎる」ともてあましている。数億円の施設解体費が壁となり、全体の解体を先延ばして場外馬券場の民間貸与などで収益を得る自治体もある。
福山市はかつて防災公園整備を計画したものの土地を取得できなかったことがある。ただ防災公園には「川の氾濫の恐れがあり、不向き」(市幹部)とする。
市が「白紙」とする一方、企業や市民の関心は高まっている。
福山市などに店舗を展開するスーパーの担当者は「駅から近く関心はある。広大だが、市が切り売りなどを決めれば検討したい」。広島市などで大型ショッピングセンターを運営する業者は「市の考え方を情報収集している」と明かす。(中国新聞)
【写真説明】来年3月末の廃止後の跡地活用策が課題に浮上している福山競馬場