日本ユニシス(東京)への民間委託拡大が困難になった岩手競馬は来シーズン、今季よりも厳しい経営が待ち受ける。国の制度改正により公営企業金融公庫からの還付金(2008年度・約2億円)がなくなるためだ。来年度も現行方式での運営が確実な状況となっている中、県競馬組合は「来年度の収支計画は相当厳しく見積もらないといけない」と危機感を募らせ、一層の業務効率化を図る考えだ。
県競馬組合によると、08年度は公営企業金融公庫から公営競技納付金として1億9900万円が還付された。この還付金を開催経費に充てるなどして存続条件の「収支均衡」を図っている。
しかし、今年4月の地方財政法施行令の改正により、09年度から還付金がなくなる。このため、来年度の運営は本年度に比べ、マイナス2億円からのスタートとなる。
開会中の県議会9月定例会の一般質問では、佐々木博氏(民主・県民会議)が「本年度よりもさらに厳しい状況と認識して計画をつくるべきだ」、工藤大輔氏(同)も「2億円の不足分をどう確保するのか」と、来季の運営を懸念する声が相次いだ。
厳しい状況を打開しようと、県競馬組合が「切り札」に考えていた民間委託拡大は、交渉先の日本ユニシスとの協議が事実上、打ち切りとなり、組合管理者の達増知事は今月末に、来年度の運営を「現行方式」とする方針を示すとみられる。
しかし、売り上げの減少に応じてコストを削減し、収支均衡を保つ現行方式は、競馬関係者から「限界が近い」との声も聞かれる。
達増知事は「競馬関係者や取引先企業と共通の認識に立ち、収入拡大に向けた方策とともに、経費の見直しや業務の効率化をさらに徹底する」と話す。(岩手日報)