2008年10月1日水曜日

民間委託拡大が難航 岩手競馬

 売り上げ低迷が続く岩手競馬の民間委託拡大をめぐる交渉が難航している。県競馬組合(管理者・達増拓也知事)が交渉相手に選んだIT関連会社が、具体的な事業計画の提示を拒んでいるためだ。30日の組合臨時議会で達増知事は、交渉がまとまらなければ現行方式で来年度の競馬事業を運営する考えを示した。
 「岩手競馬は毎年10%ずつ売り上げが落ちている。危機感はあるのか」「事務方で無理なら、トップが交渉するべきではないか」
 交渉の行き詰まりを説明する達増知事に、議員から厳しい質問が浴びせられた。民間企業のノウハウを取り入れるため、日本ユニシス(本社・東京都江東区)との交渉に一層努力をすべきだとの指摘だが、知事は「企画提案の中身が分からないまま、本当にすべてを任せていいのか」と反論。10月末までに交渉がまとまらなかった場合、売上高を踏まえたコスト調整で黒字を確保する今の方式(07年度に採用)で09年度も運営していく方針を示した。
 臨時議会は、議会側が組合に「積極的かつ早急に正常な交渉を進めるよう強く要請する」との異例の要請文を突きつけて閉会。議論は最後まで平行線をたどった。
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 組合が模索しているのは、馬券の発売・払い戻しやファンサービスを民間企業に委託する運営方式。売り上げ低迷の続く岩手競馬を、民間の知恵を活用して活性化する狙いで、今年5月末、日本ユニシスが交渉先に選ばれた。
 それから4カ月。組合によると8月末までに7回の協議が持たれたが、具体的な交渉は進まない。危機感を募らせた達増知事が同社の社長に手紙で交渉を求めたが、これも不調だという。
 なぜ交渉が進まないのか。
 組合は「日本ユニシス側から具体的な事業計画の提案がなく、共同作業に入れない」(千葉英寛・副管理者)と不満を募らせる。交渉先を決める委員会で、同社は民間視点の経営管理手法の導入や、インターネットを活用した事業展開が高く評価された一方、賞典費の大幅削減や、組合への収益保証の割合(0、25%)の低さなどが課題として指摘された。しかし、当初の企画提案の内容を超える具体的な計画は同社側から示されないという。
 一方の日本ユニシス側にも言い分はある。組合の説明によると、同社側は「民間のノウハウは金(と同じ)」と秘密保持契約を要求。県、盛岡市、奥州市など組合の構成団体にも計画を明かさないよう求めている。県民への説明が必要な県競馬組合にはのめない条件だ。
 県と盛岡、奥州両市から計330億円の融資を受け「収支均衡」を条件に存続が決まった岩手競馬。よりよい経営のあり方を探るために始めた民間委託拡大の検討が、交渉の入り口でもたついている。(朝日新聞)