岩手競馬の民間委託拡大をめぐり、競馬関係者らの間で、交渉先のソフトウエア大手日本ユニシス(東京)に対し不信感が募っている。
交渉期限が迫る中、具体的な事業計画を示さないばかりか、担当者が長期出張するなど、真意を推し量れないからだ。県競馬組合との協議は今後も難航が予想され、時間切れとなる可能性も出てきた。
「生活にかかわる重要なことなのに一言の説明もない。パートナーとして信頼関係が築けるわけがない」。県調騎会の幹部は、来季の事業計画を明かさないユニシスに怒りを隠さない。
これまでに示された計画は、賞典費の大幅削減などを盛り込んだ企画提案だけ。厩務員の男性(55)は「当初の計画のままでは厩舎の半分以上がつぶれる。ユニシスには来てほしくない」と話す。
ユニシスは6月の協議開始前から、一貫して守秘義務の契約を求めている。これに対し、競馬組合は「原則公開」を主張し、協議は入り口で止まっている。
関係者が疑問視するのは、ユニシスの窓口を務める産業機構研究所の矢島洋一所長の対応だ。矢島所長は9月中旬―下旬、競馬組合の協議の申し出を「長期出張」を理由に固辞。守秘扱いとならない範囲での協議にも一切応じず、関係者の多くは「熱意が感じられない」と感じている。
ユニシスの姿勢について、奥州市選出の県議は「交渉過程で岩手競馬への興味を失ったのでないか。時間切れを待っているかのようだ」と分析。同市で飲食店を経営する岩手競馬ファンの男性(44)は「時間の無駄遣いだ」と協議の打ち切りを求める。 競馬組合は2日、都内で矢島所長と協議し、守秘義務契約とは別に、情報管理のあり方について構成団体の県、奥州、盛岡両市を含めた5者間で契約を結ぶ方向で調整に入った。協議進展の可能性が出てきたが、残された時間は多くない。 今月の民間委託拡大の最終判断を前に、競馬組合管理者の達増拓也知事は県議会で協議継続の意向を説明。一方で「日程的に非常に厳しい」との見方を示した。 ユニシス広報部は「担当者の対応が誤解を招いたかもしれないが、会社として民間委託の受託に取り組む姿勢に変わりはない」と話している。(河北新報)