平成21年春闘をめぐり、労働組合側の連合は29日、定期昇給の維持と物価上昇分に応じたベースアップ(ベア)を求めていく春闘方針を決めた。連合は平成13年春闘以降、「ベア」という言葉を封印し、「賃金改善」という表現を使ってきたが、8年ぶりに復活させた。値上げラッシュなどで物価が上昇し家計を圧迫しており、賃金水準の底上げを目指し強い姿勢で交渉に臨む必要があると判断したためだ。ただ、金融危機による景気後退で企業業績が急速に悪化しており、経営側の財布のひもがきつく締まるのは確実で、例年以上に厳しい交渉となりそうだ。
連合の團野久茂副事務局長は29日の会見で、景気悪化に歯止めをかけるためにも、「消費拡大につながる賃上げが不可欠」と指摘。その上で、来春闘の基本方針として、「定期昇給と物価上昇に見合うベアの獲得を目指す」と強調した。
ベアを実現するため、連合としては初めて、業種や企業規模ごとに賃金水準を集計した「連合指標」を策定。指標と自社の賃金水準を比較することで、各労組が、春闘での目標を設定しやすくした。
さらに、各労組が目標設定や交渉について情報交換などを行うための「共闘連絡会議」を新設し、連携の強化も図る。
平成20年春闘は、3年連続の賃上げを実現したが、要求段階から前年並みの要求にとどまる労組が多く、連合の高木剛会長は「全体的な意思統一の仕方について議論をしたい」と総括していた。連絡会議の設置は、労組側の足並みをそろえ、交渉力を高めるのが狙いだ。
連合は30日の中央討論集会で具体的な議論を始め、12月2日に春闘の闘争方針を正式決定する。
ただ、企業の業績は平成21年3月期決算の予想の下方修正が相次ぐなど、急速に悪化しており、経営側が賃上げ抑制に動くのは確実。日本経団連は、春闘基本方針となる「経営労働委員会報告」を12月に策定する方針。すでに議論に着手しており、「賃上げは余力のある企業が個別に判断する」という従来の方針を踏襲する見通しだ。
経営側からは「足元の経営環境を考えれば、賃上げは厳しいところが多くなる」との声が早くも上がっている。
「ベア」復活を掲げた連合だが、その思惑とは裏腹に、多くの企業が賃上げを見送る「ベアゼロ」に逆戻りしかねない。 (産経ニュース)