2009年4月19日日曜日

再生3年目の岩手競馬 アイデア絞り増収に力


 岩手競馬が再生3年目を迎えた。過去2季のコスト削減に耐え、競馬関係者は気持ちを新たにレースに臨む。収支の上では黒字が続くが、売り上げは回復せず、支出を抑えるだけでは存続はおぼつかない。守りから攻めへ。主催する岩手県競馬組合には大胆なかじ取りが求められている。(盛岡総局・岩崎泰之)

 「アイデアはいい。組合もかなり思い切ったじゃないか」。奥州市の水沢競馬場所属の調教師佐藤正彦さん(48)は、県競馬組合の今季の取り組みに期待を寄せる。

<地方では革新的>
 注目するのは、5月中旬から一部のレースで導入する「騎手のハンディ戦」。馬の能力に応じたハンディは珍しくないが、騎手の技量によって馬に負担重量を課すのは「世界初」(県競馬組合)という。今季14戦程度が予定されている。

 新たなハンディは、騎手の技量で勝負が決まりがちな地方競馬にとっては革新的だ。レースが難しくなれば、ファンは高配当が期待できる。
 県競馬組合は今季、大金をかけなくてもできる新たな試みを模索し、ハンディ戦のほか、レースを夕方に行う「薄暮競馬」拡大などの方針をまとめた。

 出走関連の手当てなどが下がり、厩舎(きゅうしゃ)経営はギリギリの状態が続く。それでも「今は何とかやっていけている」と佐藤さん。県競馬組合には「失敗してもいい。いろいろなことをやってほしい」と攻めの姿勢を求める。

 県などから330億円の融資を受け、岩手競馬の存続が決まったのは2007年3月。県競馬組合は07年度を再生元年に位置付けた。薄暮競馬の実施など増収策を柱に経営改善に取り組んだが、「新しいことに挑戦し、失敗して赤字になったらどうするのか」と、前例のない試みには消極的だった。

 存続は単年度の収支均衡が条件だ。07、08年度の2季連続で黒字は確保したものの、08年度の売り上げは220億円にとどまり、前年度を13億円(5.3%)下回った。

<コスト減限界に>
 関係者がコスト削減を我慢すれば、当面は黒字を達成できることは実証されたが、売り上げが下がり続ける状況は無視できない。同じ馬、同じ距離、同じレースの現状維持ではファンは面白くない。いずれはコスト削減も限界点に達する。

 岩手競馬専門のメールマガジン「テシオ」の松尾康司編集長(50)は「ハンディ戦は最初こそ客の様子見があるかもしれないが、全国の関係者やファンは注目している」と評価し、「高知競馬がナイター開催を検討するなど、他の地方競馬も攻めの姿勢を打ち出している。岩手競馬も攻めていってほしい」と訴える。

 今月4―13日の開幕6日間の売り上げは、9億6500万円で計画を2100万円(2.2%)上回った。昨年同期と比べると、2100万円(2.2%)少ないが、不況の中でまずまずのスタートを切った。

 「今季は全精力をつぎ込み、あらん限りの工夫を凝らして結果を出したい」と県競馬組合の宮一夫事務局長。組合管理者の達増拓也知事は「底は近い感じだ。底割れしないよう、地に足の付いた改革、改善を1年間続けたい」と話している。(河北新報)
<写真>レースの合間、騎手らと談笑する佐藤さん(右から2人目)。県競馬組合に攻めの姿勢を望む=13日、奥州市の水沢競馬場