2008年9月15日月曜日

人間の長寿にも通じる 日本最高齢の誘導馬、元気の秘訣は?


 笠松競馬場(笠松町)に日本最高齢の誘導馬がいる。サラブレッドのハクリュウボーイ。芦毛(あしげ)の25歳だ。馬と人では成長の具合や生殖可能な年齢幅が異なり単純な換算は難しいが、およそ人間の80代半ばにあたる。15日は敬老の日。なお現役を貫く「おじいちゃんのホシ」。その元気の秘訣(ひけつ)に迫った。
 「ハクリュウ」の名前通りの白い毛、そして年齢から、足しげく通うファンは「パクじい」と呼ぶ。場内のグッズ売店には、オグリキャップなど名馬たちのグッズに交じって、関係者やファンが手作りで寄せた「パクじいグッズ」も並ぶ。
 誘導馬は、出走馬の隊列を厩舎地区から下見所(パドック)、そしてコースまで先導する。誘導馬騎手の塚本幸典さん(52)を乗せて1レース当たり約1キロを歩く。通常1日10レースで計10キロ。残暑が厳しくても雨が降っても競馬はあるため骨の折れる肉体労働だ。
 祖父は1962年米国最優秀2歳牡馬のネヴァーベンド。おいには北海道営競馬で重賞5勝のクラキングオーがいる良血馬だ。
 ハクリュウボーイは1985年に笠松で競走馬デビュー。89年まで50戦して12勝を挙げた。88年12月には、中央競馬移籍前のオグリキャップと同じレースに出走、最終4コーナーまで先頭を走っている。7歳で競走馬を引退し、10歳で誘導馬デビュー。以来、キャリア16年だ。

 競走馬の平均寿命は20-25歳といわれる。愛馬とともに「生涯現役」を掲げる塚本さんは元気の秘密を「やっぱり毎日の運動と粗食じゃないでしょうか」と推測する。
 競馬開催のない日も主に午前中、塚本さんが乗ったり引いたりして、厩舎の周りを歩く。食事も「誘導馬になってからは麦や配合飼料などの高カロリー食を避けて、干し草中心です」
 好物は草を固めた粗飼料。塚本さんは「硬いものをぼりぼり食べるからあごの力が衰えない。獣医師に『歯のかみ合わせがきれい』と言われた」と話す。
 馬は臼歯が発達している。干し草や穀物をすりつぶす臼歯は年とともにすり減る。かみ合わせが悪く、すり減った臼歯が鋭く変形すると、高齢馬はしばしば口内炎になる。馬はストレスに弱く、口内炎のように食欲があるのに食べられない状態は体全体への負担が大きい。歯のきれいなハクリュウボーイはそんな病気とは無縁だ。
 適度な運動、そしてきれいな歯を保って質素な食事。長生きと健康の秘密は馬も人間も共通のようだ。体重90キロで体脂肪率30%。歯磨きが面倒な30歳の記者には耳が痛いお話で…。(中日新聞)
<写真>出走馬の列を誘導するハクリュウボーイと塚本幸典騎手(中)