JR木更津駅西口前の商業ビル「アクア木更津」に、船橋競馬場の場外馬券売り場が開設されることになった。ビル所有者でもある木更津市は「中心市街地の活性化につなげたい」と期待を寄せる。一方で、ギャンブル場の誘致は市のイメージ悪化を招くとして、反対派住民約70人が「連絡会」を結成。街頭での署名活動を通じて事業撤回を求めるなど、反発を強めている。
場外馬券売り場の開設は、市から同ビルの管理運営を委託されている「日本総合企画」(本社・東京)が、2005年から計画。完全会員制で、1万2000人の利用、年間約20億円の収入を目標にしている。船橋、大井、浦和、川崎の南関東4競馬(開催日数274日)を扱う予定だ。
オープン時期は未定だが、同社が、船橋競馬を主催する県、船橋市、習志野市でつくる県競馬組合(管理者・堂本知事)から業務を受託して営業する。今後、地元・木更津署との協議がまとまり次第、監督官庁の農水省へ承認申請を行う。組合は「場外馬券場は県内で初。最近はインターネットでの馬券購入者が増えているが、少しでも売り上げを伸ばしたい」と、年度内の開設を目指している。
計画の背景には、05年1月の競馬法改正がある。これにより、競馬実施に関する事務も民間委託できるようになった。またアクア木更津は、延べ床面積(地上9階、地下1階)計約4万2000平方メートルのうち、約25%の地下1階部分が空いたままの状態で、テナントの誘致が課題となっていた。
同社の計画・要請を受けた組合は昨年8月から、開設に必要となる近隣11町内会長に対して同意の要請を開始。今年4月までに、全11町内会長の同意にこぎ着けた。計画が浮上した05年以降、「住民の意見などを参考に総合的に判断したい」と慎重な姿勢を見せていた木更津市も、今年6月12日に同意。今月3日の市議会一般質問で、市議に同意の理由を尋ねられた市側は「11町内会の意見を尊重したい」と強調した。
ただ、市民の間には「木更津を訪れる人が増えれば」と早期開設を望む声もある一方、反対意見も聞かれる。「反対連絡会」事務局は「『町内会長の同意』が、住民の意見を反映していない」と主張。また、市所有のビルは市民全体の財産であり、一部町内会で決定されるのは納得できない――としている。同会は8月から、木更津駅周辺で署名活動を展開し、集めた約1700人分の反対署名を9月議会に提出している。組合と連絡会は8月中旬に協議の場を設けたが、それぞれの主張は平行線のままだ。
農水省競馬監督課は「場外馬券場の開設には反対意見が付きもの。住民の意見をどうまとめるかが重要」としている。(読売新聞)