2008年9月11日木曜日

ユニシスとの交渉暗礁 岩手競馬の民間委託

 岩手競馬の民間委託拡大で、県競馬組合(管理者・達増知事)と日本ユニシス(東京)の交渉が暗礁に乗り上げている。同社は具体的な協議に入る前に「守秘義務契約」を結ぶよう組合側に求めているが、組合の「三役」となる達増知事、谷藤裕明盛岡市長、相原正明奥州市長が相次いで異論を表明。
 交渉先に決めてから3カ月以上がたっても、具体的な協議に入れない事態が続いており、決裂の可能性も出ている。
 日本ユニシスは県競馬組合と守秘義務契約を交わした上で、組合側と具体的な協議に入りたい考え。同社が出した情報を、外部に示す場合は、ユニシス側の事前承諾を得る-とする内容だ。
 背景には、民間のノウハウが詰まった再建案の外部流出の懸念と、再建案を示した上で委託を断られる「情報の無償提供」を避けたいとの考えがあり、民間企業が交渉する際の原則-との姿勢を崩していない。
 日本ユニシス産業機構研究所の矢島洋一所長は「機密情報を出す時は、守秘義務契約を結ぶのが民間の当たり前のルール。契約を交わせば原案は出す」と理解を求める。
 しかし、組合側は厩舎(きゅうしゃ)関係者や県民への情報開示を理由に守秘義務契約に難色を示す。
 達増知事は「管理者として知ったことを構成団体に相談できない、議会にも答えられないでは機能しない」とし、谷藤盛岡市長は「中身が出せないような状態では説明のしようがない。われわれには説明責任がある」と強調。相原奥州市長も「(組合に対して県、盛岡、奥州の構成団体が)330億円を貸した状態の中、情報公開せずに新たな展開は困難だ」と語る。
 組合は10月をめどに2009年度から包括的な業務委託をするか判断するが、残された時間は少ない。仮に日本ユニシスとの交渉が決裂した場合、09年度移行の民間委託拡大は白紙に戻る形となり、岩手競馬再建に向けた戦略は再構築が迫られる。(岩手日報)