2010年1月13日水曜日
地方競馬を支えて<3>騎手候補生たち(2) 技術習得へ厳しい訓練 南関東デビュー狭き門
周辺の木々が紅葉を始めた昨年11月下旬。地方競馬教養センターでは角馬場での基本練習に加え、ダートコースを使った走路練習が始まった。
「あんなにスピードを出すつもりじゃなかったが…」。89期入所生の柿元量平君(18)=千葉県習志野市出身=が肩を落とした。抑えがきかず、馬任せで走ってしまった。
父親は船橋競馬の元騎手で現在は調教師。卒業後は父親の厩舎の所属騎手としてのデビューが内定している。しかし同期の中でも訓練は遅れがちで、教官に叱責されることも多い。
騎手の道を選んだことで、父親の偉大さを改めて実感するという。「簡単そうに騎乗していたので自分もできるかと思ったが、見るとするのは大違いだった」。この数日前、両親が面会に来た。父親は騎乗のアドバイスに加え「頑張れよ」と励まされた。
「自分の技術はまだまだ未熟。同期に置いて行かれないよう、何とか食らいついていきたい」と力を込める。
「最初の1カ月は辞めたい、帰りたいとばかり思っていたが、もう大丈夫」。青森県八戸市出身の下村瑠衣さん(16)は89期生唯一の女性。同センターにとっても5年ぶりの女性入所生となる。
3歳から乗馬クラブでポニーに乗り、物心ついたころには騎手を目指していた。中学時代は部活動よりも、乗馬クラブでの騎乗練習がメーンだった。
乗馬経験の豊富さもあって技術は同期の中でも高い方だが、入所当初は男性との体力差から訓練の進み具合が遅れがちだった。「何で自分だけできないのか」と悩むことも多かった。それでも訓練後の自由時間に自主的に筋力トレーニングに取り組んだ効果が徐々に現れ、引けをとらないようになってきた。
川崎競馬にあこがれがあるが、地方競馬の中で比較的賞金の高い南関東地区は新人騎手には狭き門。「教官からは『川崎は難しい』と言われた。実家に近い岩手競馬も考えているが…」と複雑な胸中をのぞかせる。 (下野新聞)
[写真説明]角馬場で基礎練習に取り組む89期生