2010年1月15日金曜日
地方競馬を支えて<5>厩務員候補生 大学中退し門たたく 苦労続くが変わらぬ志
「馬のことをまったく知らない状態で来たので苦労した」
地方競馬教養センター厩務員養成課程の湧田裕介さん(21)=浜松市出身。同センターは騎手だけでなく厩務員も養成しており、現在は同課程唯一の入所生だ。
子どものころから動物が好きで、獣医師を目指したこともあったが、「学力や経済的な面で断念した」という。東京都内の理工系私大に進学するも、授業や実験など、目指すものとの違いを感じ2年生の途中で退学。昨年8月、同センターの門をたたいた。
学費など約60万円はカラオケ店や飲食店などアルバイトの掛け持ちでためた。「両親に相談せず大学を辞めたので、かなり反対された。特にサラリーマンの父はなかなか許してくれなかった」と苦笑する。
厩務員課程は8月から1月までの半年間。騎手候補生同様、早朝の厩舎作業に始まり、騎乗訓練や競馬に関する法規、馬の健康状態などの授業を受ける。
入所前まで乗馬経験はおろか、馬に触ったこともなかった。「苦労の連続。馬は日によって全然違う。思い通りに動いてくれたり、言うことをきかなかったり…」
夢は地方競馬最大規模を誇る大井競馬(東京都)の厩務員。昨年11月に見学に行き、あこがれが一層強くなった。しかし厩務員の枠は決して多くはなく、中でも大井は中央競馬に次ぐ狭き門。指導教官からは卒業後、競走馬の育成牧場で経験を積んでからの就職も勧められている。
馬とともに過ごす日々の中、厩務員の楽しい部分、厳しい部分とも見えてきた。それでも志が揺らぐことはないという。「最近、ようやく馬が懐いてくれるようになった。疲れはあるが、やりがいを感じる」。その目は充実感にあふれていた。(下野新聞)
[写真説明]訓練馬を丹念に手入れする湧田さん