2010年1月14日木曜日

地方競馬を支えて<4>後進指導 元騎手の目 無事デビューを願う 求められる心構えも強調


 「今の子たちは幸せ。これだけの施設があり実戦的な練習も積める。ただハングリーさがちょっと足りないかな」

 地方競馬教養センター参与の佐々木竹見さん(68)は川崎競馬の元騎手で、42年の騎手生活で通算7153勝の日本記録を持つ。現役を引退した2001年から同センターで定期的に後進の指導に当たっている。

 昨年11月26日、ダートコースを見渡す審判塔に佐々木さんの姿があった。89期入所生の騎乗を見るのはこの日が初めて。午前中、コースを騎乗する一人一人を双眼鏡でチェック。午後の授業では騎乗時に指導教官が撮影したビデオを交え、各自の問題点を指摘した。

 「もっとスピードを出さないと」「馬に引っ張られちゃってる。まだまだだな」。厳しい言葉が並ぶ。候補生らはメモをとったり、真剣な表情で聴き入る。 

 スタート時に悲鳴を上げて注意された日野太一さん(19)=福岡県久留米市出身=は「思った以上にスピードが出て、まずいと思って…」。日野君とは逆に十分に加速できなかった山頭信義君(16)=千葉県習志野市出身=は「いつもより速く走ったつもりだったが、不十分だった。次は怖がらずに乗りたい」と反省した。

 騎手に求められる心構えについて佐々木さんは「まずは素直な心」と強調する。「まじめに厩舎の掃除をし、馬の世話をする。周囲に信用してもらうことで、いい馬にも乗せてもらえるようになる」

 現役時代は南関東リーディング通算17回獲得の栄光だけでなく、けがの連続だった。骨折した左足には今も金具が入っている。それだけに「入所中とにかくけがをしないで。全員が無事に卒業しデビューしてほしい」と願っている。(下野新聞)

 [写真説明]89期生の騎乗をチェックする佐々木さん。厳しい言葉とは裏腹にその目はどこか優しげだ