福山市が福山競馬を継続する決め手となった2011年度の実質単年度収支の黒字見通しは、東日本大震災による影響がもたらした。12年度は特別な要因がなくなり、大幅な売り上げ減が見込まれる。将来展望を切り開く真の振興策が求められる正念場の一年となる。
震災の影響が最も大きかった昨年4~6月の売り上げは、前年同期と比べて16・38%増の20億9200万円を計上した。しかし、その影響も消えかけている。競馬場の入場者数も減少の一途だ。
羽田皓市長は20日の記者会見で「新年度の予算に対して、実態がどうなるのか心配している」と、見通せない先行きを案じた。
福山競馬は1949年の初レース以来、97年度まで計411億6700万円を一般会計に繰り出したが、98年度からはゼロが続く。収益で市の財政を支える本来の目的は、既に果たせなくなった。
羽田市長は「雇用の場の確保も公的な役割だ」と強調する。廃止になれば、調教師や競馬専門紙の業者など約760人が打撃を受ける。羽田市長の継続の決断は、財源確保から雇用確保へと役割を変質させた地方競馬の現状も浮き彫りにしている。(中国新聞)