2009年2月18日水曜日

若草開設にいぜん溝深く─道営競馬ミニ場外問題

 北海道競馬事務所が、登別市若草町4の旧パチンコ店に開設を目指しているミニ場外勝馬投票券発売所「Aiba登別室蘭(仮称)」。地元への説明会では、オープンを期待する声に対し、住民への説明手順を疑問視し、道側の姿勢に反対する意見が出されるなど、施設設置に対する議論は深まっていない。課題と解決策を整理した上で、方向性を見いだすことが必要だ。
 Aiba登別室蘭は、日本中央競馬会(JRA)のウインズ室蘭を貸借して道営競馬を発売していた室蘭場外発売所に代わる施設。運営は北海道競馬株式会社(本社札幌)で、道営と帯広市の「ばんえい」、南関東(大井、川崎、船橋、浦和)などの地方競馬を発売する。有馬記念や日本ダービーといったJRAの中央競馬は、従来通りウインズ室蘭での発売で、Aibaでは扱わない。
 同事務所が住民説明会で示した資料によると、室蘭場外の発売額は1日あたり542万円(平成19年、道営競馬のみ)。道営競馬のほか、ばんえいなどを通年発売しているAiba小樽と比較すると、1日あたりの発売金額は270万円ほど上回っている。

 ◇ 努力求められる道側

 しかし、室蘭場外は割高なJRAの施設を賃貸していたため、経費を差し引くと19年の黒字は355万円。年間で1億円超の黒字をはじき出すAiba小樽に比べると収益性が劣る。Aiba登別室蘭は、経費を抑え収益を確保できる施設と位置づけている。
 周辺の住民に多大な犠牲を強いて、大多数の道民にとって必要ない―との立場から反対している市民は署名活動を展開。「大きな財政赤字を抱える道が、住民生活に有害無益な施設を強引に造ろうとしている」とする。
 また、「住民に知られないように話を進めているのではないか」と、連合町内会の役員から始まった情報提供の手順そのものを批判。道側の「段階を踏んで話をしている」との説明と隔たりがある。22年度に単年度収支の均衡を図るとした説明資料も「競馬事務所が発表している数字をそのまま信用するのは到底できない」と疑問を抱く。
 場外の開設には(1)関係町内会の同意が得られ地域の協力が得られる(2)管轄する警察の同意、協力が得られる(3)学校その他の文教施設、病院から適当な距離を有しており著しい支障をきたす恐れがない―の3要件を満たすことが必要となっている。
 反対派はこの要件を「場外発売所は子供や高齢者、病人にとって望ましくない、警察が常に目を光らせる必要がある嫌悪施設であることを明確に示している」ととらえ「公園がすぐそばにあり、平穏な住宅地に施設が計画されていることに憤りを感じる」との姿勢だ。
 一方、賛成派からは「建物が空いたままになっているよりはよい」「パチンコ店など娯楽施設がなくなった。将来的にはあってもいいのでは」など、まちづくりの観点から開設を望む声があり、水面下では誘致期成会の設立に向けた動きもある。
 開設に賛否両論ある中、現時点で欠けているのは、場外発売所の必要性に関する議論といえる。道営競馬は、開催競馬場の赤字を場外発売で埋める構造で、経費を抑えたミニ場外での発売は収益の大きな柱となっている。
 反対派が掲げている違法駐車などの懸念に対して、道が示す「警察の指導をもらいながら対応する」といった解決策や、地域交流室の開設などの地域貢献策は理解されているとは言い難く、溝は埋まっていない。
 場外発売所の利用者は市外からもある。Aiba登別室蘭の開設は、若草地区だけの問題ととらえず、市内経済への影響やまちづくりのあり方など、大局的な見地から設置を判断する必要があるだろう。いずれにしても、道側には住民との話し合う場を何度となく持ち、一定程度の理解を得る努力が求められている。(室蘭民法)