多額な累積赤字を抱える道営ホッカイドウ競馬について、道が札幌競馬場でのレース開催から撤退する方向で検討に入った。
道は昨年、旭川での開催を取りやめた。札幌からも撤退となれば、来年度は門別競馬場での開催だけとなる。
札幌でのレースは道営競馬のシンボルになっている。残念に思うファンも多いのではないか。
馬産地からは影響を心配する声も出ている。道はぎりぎりまで札幌開催の継続策を探ってもらいたい。
道営競馬は1992年度以降、赤字が毎年続き、累積赤字額は約240億円に達している。
財政が悪化している中だが、道は赤字分を一般会計から穴埋めしている。このため、2010年度に単年度赤字を解消できなければ、競馬事業を廃止する方針も打ち出した。
札幌競馬場では例年春に4~6日開催され、今年は6日間行われた。売上額は約7億2千万円で、道の計画を約1割下回った。
道は、札幌でレースをやめれば、約1億5千万円の経費が節減できると試算している。
赤字体質の改善が急務だが、道営競馬には、馬産地の振興という重要な役割があることを見落としてはならない。
道内には、日高管内を中心に約千の軽種馬生産牧場があり、全国の競走馬の9割を供給している。
年間生産頭数は約7千頭で、約4千頭が中央競馬へ、約2千頭が地方競馬でデビューする。このうち道営競馬には約600頭が行き、別の地方競馬に回る馬も多い。
中央競馬の盛り上がりも、道内馬産地の下支えがあってこそだといえる。競馬界全体の活性化のためにも道営競馬の魅力をさらに高め、存続を図ることが重要になる。
例えば、道は3年前、南関東にある4競馬場と提携し、本州ファンが道営競馬の馬券をインターネットで買えるシステムを導入した。
この利用が急速に増え、本年度は馬券販売額の3割強を占めるまでになっている。道内販売が低迷しているだけに、突出した成果といえる。
道は、首都圏のファンに道営競馬に関する情報を提供し、道外での馬券販売にさらに力を入れるべきだ。
レースの数や出走馬が少ないというファンの不満もある。馬主らと調整し、要望に応えてもらいたい。
好きな馬のオーナー気分が味わえるサポーターズクラブなどのファンサービスの充実も求められる。
馬産地で競馬場を持つ地域は、北海道以外にはない。競馬見学を観光ルートに加えるなど、地元の努力も欠かせない。(北海道新聞社説)