2009年11月30日月曜日

岩手競馬存続、再び暗雲 将来展望の議論必要

 岩手競馬の売り上げ減少に歯止めがかからない。赤字を出さない「収支均衡」を存続条件に再出発してから3年目。売り上げ減に応じて開催経費を削減するなど、計画の下方修正で収支均衡を図っているが、数字上のやりくりだけで根本的な解決策には至っていない。今季は職員の退職手当基金の積み立てを見送ったほか、老朽化する施設の設備更新費など財源不足も露呈。景気低迷で全国の地方競馬が苦境にあえぐ中、岩手競馬の事業継続に再び暗雲が立ち込めている。(報道部・宮川哲)

 「必要な基金を積まずに収支均衡と言えるのか」。25日の県競馬組合議会は、退職手当基金に積み立てる予定だった8千万円を全額コスト削減に振り向けたことに議論が集中した。

 ▽苦渋の決断

 県競馬組合は職員の退職金を確保するために毎年度8千万円を基金として積み立てる計画を立てているが、売り上げ不振で今季は積み立てを見送った。

 職員20人の退職金総額は約3億円に上る見通しだが、基金残高はわずか440万円。宮一夫副管理者は「積立金を確保するために、広告宣伝やファン優待バスをやめれば、さらに発売額が減りかねない」と苦渋の決断をにじませる。

 事業継続に必要な設備更新費の財源もめどが立っていない。県は、水沢競馬場に隣接する場外発売所の大型映像装置や勝馬投票券の自動販売払戻機の更新などに今後数年間で5億円以上が必要と試算している。

 しかし、組合が設備更新のために積み立てている施設等整備基金は約1億4千万円しかない。本来は競馬事業で得た収入で開催経費や設備更新費、退職金など、すべての支出を賄わなければならないが、自力再生の道筋は見えない。

 岩手競馬の売り上げは1991年度の689億円をピークに減少が続く。09年度当初は218億円の売り上げを見込んだが、今月に入り210億円に下方修正。ピーク時の3分の1以下に落ち込んでいる。

 ▽「負の連鎖」

 達増知事は「来年の日本経済はプラス成長との予測もある」と景気好転に期待を寄せるが、売り上げ回復につながるかは不透明だ。

 県民世論を二分した存廃論議からもうすぐ3年。民間企業への包括業務委託を08年度に見送った後、岩手競馬の将来ビジョンが十分に議論されてきたとは言えない。

 岩手競馬が廃止になれば、雇用や地域経済に大きな影響が出る。一方、今の状況が続けば、またも多額の税金投入が必要になることが予想され、県民理解を得られるか疑問だ。

 「滝つぼに向かって突き進んでいるようだ」。競馬関係者から将来を悲観する声が漏れる。「負の連鎖」をどう断ち切るのか。

 事業継続を最前提とするならば、盛岡、水沢の「二場体制」の見直しなどを含め、中途半端な改革ではもはや立ち行かなくなっている。県民負担の影響を最小限に抑えるための方策を議論し直す時期に来ている。(岩手日報)