2010年3月13日土曜日

公営ギャンブル苦境

競輪・競艇売り上げ激減 主催16市 財政への貢献低迷

平日の平和島競艇場(1日午後3時3分、大田区平和島で)
 自治体が開催する「公営ギャンブル」が、青息吐息になっている。多摩地区では、26市中16市が競輪と競艇事業を主催しているが、どこの売り上げもピーク時の半分以下。主催市の新年度当初予算案を見ても、公営ギャンブルの会計から市一般会計への繰り出し額は激減している。各市はファンを増やそうと躍起になっている。

 「ギャンブルは不況に強いと言われているが、とんでもない。今を生きるのが精いっぱいだ」

 大田区の平和島競艇場でレースを主催する府中市の担当者は、そう嘆息する。ピーク時の1990年度、年間約1857億円もあった売り上げは、2008年度には約640億円と3分の1に減少。当時、約168億円あった市一般会計への繰り出しも、新年度当初予算案では5億円だけだ。

 同市が競艇事業を始めたのは55年。固定資産税の課税対象にならない府中刑務所があることなどから、都が主催から撤退した同競艇場で開催に乗り出したという。担当者は「市財政に寄与するのが使命なのに」と現状に苦悩している。

 公営ギャンブルは戦後、地方財政の安定化を目指して制度化された。高度成長期からバブル期にかけ、多額の収益が自治体財政を潤してきた。しかし近年、どこの主催者も府中市と同じ苦境を抱えている。

 「KEIRINグランプリ」発祥の地で、全国トップクラスの入場者数を誇るという立川競輪。これまで、収益から総額約1323億円を市一般会計に繰り出し、JR立川駅前の再開発などに使われ、立川市を多摩地区の中心に押し上げる原動力になってきた。

 しかし、ピーク時(92年度)に約907億円あった売り上げは、08年度は約216億円。運営基盤安定化のため、施設改修や従業員の退職金などに使われる基金を積み増すことにしたため、89年度に約78億円あった繰り出しは、05年度からは1000万円だけになっている。

 また、都十一市競輪事業組合と都四市競艇事業組合に至っては、新年度当初予算案段階で、構成市への繰り出しがゼロだった。

 各公営ギャンブル不振の背景には、景気後退による集客減がある。

目立つ年配男性 「レジャー白書」を発行する日本生産性本部余暇創研によると、著名人を起用したテレビCMを流し、「ハイセイコー」など一般にも知られるアイドル馬を生んだ競馬と違い、競輪と競艇は一般人への浸透に失敗した。ファン層の世代交代が進まず、会場には年配の男性の姿ばかりが目立つ。どの主催者も、集客はピーク時の4割前後。同本部は「今の高齢のファン層が抜けたら、事業が沈み込んでしまう」と指摘しており、各担当者は「新規顧客の獲得」を課題に挙げている。(読売新聞)