荒尾市は15日、約14億円の累積赤字を抱え、存廃問題が浮上している荒尾競馬の経営状況をより正確に把握するため、会計手法を従来の官庁型から企業型の「公営企業会計」に切り替える方針を明らかにした。正確なコストの把握による採算管理や、現金以外の資産・負債を個別に評価できる点に特徴がある。仮に競馬が廃止になった場合は破産処理に必要な資金調達面でメリットがあり、危機管理の側面もある。22日開会の市議会12月定例会に競馬組合の規約変更案を提案する。
市によると、官庁会計では歳入と歳出でしか経営状況を把握できないが、公営企業会計では土地・建物や場内の大型モニターなども査定され、実態を総合的に知ることができるという。
また県市町村総室によると、公営企業会計を採用していれば、仮に競馬事業が行き詰まった場合、10年償還の地方債「第三セクター等改革推進債」(三セク債)を活用できる可能性があるという。三セク債は2013年度までの時限措置だが、低金利で資金を調達できるため市の財政への影響を小さくできる可能性があるという。
市は、有識者でつくる「荒尾競馬あり方検討会」が昨年10月にまとめた提言書に基づき、経営の透明性を高める目的で、会計方式の切り替えの準備を進めてきた。競馬組合の構成員である県も、同様の議案を30日開会の県議会定例会に提案する予定。
両議会の議決を経て、総務省が許可すれば、来年2月ごろ切り替えが完了、同8月には新たな会計手法による財務状況を公表するという。
荒尾市は「経営状況の透明化を図り、改善点をはっきりさせた上で立て直しに向けた取り組みを強化するのが第一の狙い。万一の場合に備えての危機管理の側面はあるが、荒尾競馬の廃止を見据えて適用を決めた訳では決してない」としている。(西日本新聞)