2010年11月27日土曜日

笠松競馬:高崎競馬の調教師、岩手で挫折の騎手 再起の夢


 笠松競馬(岐阜県笠松町)に、廃止された群馬県の高崎競馬から移ってきた調教師と、岩手競馬で一度は挫折し再起をかけて再デビューした騎手がいる。しかし、「第二の人生」の舞台となった笠松競馬は、財政難で存続の危機に直面している。失いかけた夢を追う2人は、笠松競馬の存続を願っている。
 「馬券の売り上げが落ちて財政が悪化してと、高崎の時と似た雰囲気だ。良い馬の出る競馬場なのに」。調教師の法理勝弘さん(54)が笠松競馬の行く末に気をもむ。
 法理さんは、高崎競馬で調教師として約20年間勤務した。だが、04年9月、県知事が県議会で廃止を表明。議会傍聴席にいた法理さんは「『何でだ』とため息が出た」と振り返る。
 高崎競馬にとって最後のレース日となった同年の大みそか。予定されていた大きなレースは大雪で中止になった。「その日に限って降った。『なみだ雪』だったのかな」
 その後は牧場で働いていたが、「競馬は勝ち負けがあって楽しい。手をかけた馬が勝つのはうれしい」という思いを捨てきれず、知人のつてを頼って笠松競馬で調教師の仕事を再開した。
 だが、笠松競馬も存続が楽観できる状況ではない。法理さんは「騎手や調教師など競馬にはかかわる人が多いので、経営の効率は悪いかもしれない」としながらも、「その分、たくさんの思いが込められている」と笠松競馬で働く約800人の思いを代弁する。
 吉井友彦騎手(27)は01年、岩手競馬でデビューした。しかし、乗馬機会に恵まれず、辞職して会社勤めや焼き肉店の店員をした。
 だが、テレビで競馬を見ると「馬上からの風景は違った」と、レースへの思いが募った。笠松競馬で厩務員を1年務め、騎手免許を取得し直して08年1月再デビュー。今年10月に重賞で初勝利し、今月22日には岩手時代を含めて通算100勝を果たすなど、順調に勝ち鞍(くら)を重ねている。
 「チャンスを与えてくれた笠松で馬に乗り続けたい」。吉井さんは笠松競馬の運営継続を望む。
 赤字転落が懸念される笠松競馬を運営する県地方競馬組合の最大構成団体・岐阜県は、税金投入に否定的。状況が改善しなければ廃止もやむなしとの立場を崩していない。(毎日新聞)
【写真】馬の頭をなでながら「手をかけた馬が勝つのはうれしい」と話す法理さん