2014年10月6日月曜日

笠松競馬 背水の警備 人員大幅増、機器も導入

昨年の馬脱走事故、警備員を書類送検
 羽島郡笠松町の笠松競馬場で昨年10月、調教中に脱走した競走馬と車が衝突して男性2人が死傷した事故で、県警捜査1課と岐阜羽島署は6日、業務上過失致死傷の疑いで、当時、馬が場外に出る門で警備をしていた各務原市前渡北町、パート警備員の男性(71)を書類送検した。
 送検容疑は昨年10月28日午前3時ごろ、監視を怠り、スライド式門扉を閉めなかったため、馬を脱走させた。馬は軽乗用車と衝突、弾みで軽乗用車が対向車線にはみ出して乗用車と衝突し、軽乗用車の男性=当時(64)=を死亡させ、乗用車の男性=当時(67)=に軽傷を負わせた疑い。
 同課によると、警備員は当時、門の前に立たず、近くの警備員室で業務日誌を書いていた。馬が逃げる際、非常用サイレンが鳴り、赤色灯が点灯したが、「気付かなかった」と話しているという。
 笠松競馬場では昨年2~4月にも3度馬が脱走している。県警は重大事故の発生を予見できたにもかかわらず、警備員が監視を怠ったことが事故につながったとして、書類送検に当たり厳重処分を求める意見を付けた。
組合「二度と起こさぬ」
 「今度、事故を起こしたら笠松競馬場は終わる」。笠松競馬場から競走馬が脱走し、馬と衝突した軽乗用車の男性が死亡した事故から約1年。競馬場を管理する県地方競馬組合は、背水の陣の覚悟で安全対策に取り組んでいる。
 笠松競馬場では昨年2月と3月、4月にも馬が脱走した。2月と3月には、車と接触する物損事故を起こしている。
 競走馬が乗り手を振り落として逃げる「放馬」は珍しくない。ただ、関係者は「競馬場内で止めていれば事故は起きなかった」という。
 4月の事故後、出口の鉄柵を高くしたり、非常用の赤色灯やサイレンを設置したりするなど対策を講じた。出口に配置される警備員には門の前に立ち、緊急時にスライド式の門扉をさっと閉めて脱走を防ぐように指示していた。
 だが、事故は再び起きた。4月以降、3人交代の24時間体制で警備していたが、当時、警備員は警備員室におり、逃げて来る馬を監視していなかった。
 10月の事故を受け、組合は警備員の数を倍以上に増員。緊急警報装置を作動させる無線スイッチも導入した。対応マニュアルを整備し、非常時の訓練を毎月実施するなど体制を強化している。
 今回、組合側に刑事責任は問われなかった。だが、安藤恵三業務課長は「組合として事故を二度と起こさないよう対策に万全を期したい」と話した。(岐阜新聞)
【写真】馬が脱走した出口門。警備員が常駐し、監視に当たっている=9月18日、羽島郡笠松町、笠松競馬場