2010年10月26日火曜日

つい来ちゃう」温かさ


 福山市営競馬場のパドック北にある食堂「お食事処 多幸」の店内に、甘辛いソースの香りが漂ってきた。「おまちどおさま」。店主の石井幸一(49)が、素早い手付きで3人分の焼きそばを仕上げ、声を上げた。

 30人ほどが入れる店内の壁には、「うどん」「そば」「牛丼」など、数十種類のメニューが並ぶ。競馬新聞片手に次のレースの予想に忙しい赤ら顔の男性客もいれば、おでんの皿を囲みながら、「調子はどう」「今日は外れてばっかり」と言葉を交わす常連客の姿も。石井は、額に汗を浮かべながら、再びスタンドに戻ろうと店を出る客に、「ありがとう」と声を掛けた。



 店は父・幹祐(故人)が始めて、半世紀以上になる。1960年代後半、石井は小学生の頃から、皿洗いや仕込みを手伝うようになった。

 高度経済成長のまっただ中。「いらっしゃいませ」と声を掛ける間もなく、客はどんどん押し寄せ、店内は身動きがとれないほどの盛況ぶり。羽振りのいい客は、レースに勝てば、店中の客におごって回り、数千円もの小遣いをくれたという。



 高校卒業後は福山市を離れ、大阪府内の料亭旅館で料理長を務めるなど、調理師として働いたが、13年前、父の死をきっかけに跡を継いだ。

 「とにかく忙しいから、大変だろう」。幼少時の記憶のまま、そう思って調理場に立ったが、競馬場の入場者数は、子どもの頃に比べて三分の一程度にまで落ち込み、商売は思うように行かず、「こんなはずじゃない」と頭を抱える日々が続いた。



 黙っていても、客が来る時代は終わっていたことを実感した。「温かみのある店にはまた来たくなるはず」。そう思い、一緒に店を切り盛りする妻の洋子(46)と、出来るだけ客と言葉を交わすようにした。世間話、家族の話、時には恋愛相談も。何度も繰り返して来たい、と思ってもらえるよう、家庭的な雰囲気づくりを心掛けると、次第にリピーターも増えていった。東京から毎年来る客もおり、休日に家族で訪ねていったこともある。

 幼少時からの石井を知る常連客の岩本繁則(63)は、「ついつい来ちゃうんだよ」と笑う。家族ぐるみの付き合いという尾道市因島三庄町の土木業阿部秀樹(57)、香織(51)夫婦も「競馬場で出会うまで、全く知らなかった人たちが、食堂で意気投合して、親友のように仲良くなっちゃう。そんな雰囲気がこの店にはあるんだよ」とうなずく。

 石井は厨房(ちゅうぼう)から客を見渡しながら、「年齢も、職業も、全く違う人たちが集まるこの食堂が、人間関係の素晴らしさを教えてくれた。商売は大変だけど、お客さんという財産は消えない宝」と目尻を下げた。(読売新聞)

【写真】焼きそばを作る石井。妻の洋子(中)と一緒に作り出す家庭的な雰囲気に引かれて来る客も多い(「お食事処 多幸」で)

騎手「ずっと心の中に不安」 存廃問題に揺れる福山競馬


 61周年を迎えた中国地方唯一の福山市営競馬(福山競馬)が存廃を巡って揺れている。有識者の検討委員会が先月末「速やかな廃止」を羽田皓(あきら)市長に答申。施設は老朽化し、経営改善の見通しも立たない。地方競馬は全国的に苦境が続く。福山競馬の現状と、不安の中でレースを続ける騎手を追った。

 福山競馬に所属する騎手は17人。中堅のさこ畑(さこはた、〈さこは、土へんに谷〉)雄一郎騎手(29)は、かつて「日本一小さな競馬場」と呼ばれた益田競馬場(島根県益田市)で馬を駆っていた。

 島根県出身。1998年4月、デビュー戦を勝利で飾った。「無我夢中だった。他の騎手たちに『よかったなあ』と声をかけてもらい、『勝ったんだ』と実感した」

 ロッカーが並ぶ福山競馬場の調整ルームで、さこ畑騎手は思い出の一戦を振り返る。

 だが、デビュー5年目の2002年、益田競馬場の存廃問題が浮上。有識者の検討会議では15億円を超える累積赤字の解消策が見いだせず、市長は廃止を表明。55年の歴史に幕が下ろされた。約10人の騎手の多くは関東や北陸の競馬場へ移籍。さこ畑騎手は、世話になっていた調教師の紹介で福山競馬へ移った。

 「まさか廃止になるとは思わなかったが、益田よりも規模の大きい福山に移籍できて、希望も持てた」

 だが、福山競馬の経営もすでに下り坂だった。

■年収300万円に減

 レジャーの多様化に伴う入場者数の減少、バブル景気の崩壊——。馬券の売上額はピークだった91年度の345億円から、02年度には半分にも満たない133億円に低落。累積赤字も膨らみ、移籍2年後の04年度には20億円を突破した。

 60〜80年代に整備されたスタンドや厩舎(きゅうしゃ)などの老朽化が進む。改修に充てる施設整備基金は96年度末には28億円あったが、09年度末には6億円まで減少。市の推計では今後3、4年で枯渇する見通しで、大規模な改修は困難な状況だ。

 市は累積赤字を増やすまいと、98年度で約580人いた競馬事務局の職員や臨時職員らを10年間で半減。騎手や調教師らに支払う賞金や手当などの賞典奨励費も段階的に引き下げた。移籍時は600万円ほどあったさこ畑騎手の年収も、今では300万円ほどだ。数年前から妻がパートに通い、家計をやり繰りしているという。

 「痛みを伴ってでもレースを続けたい」。競馬関係者の強い希望を尊重し、2月から議論を重ねた検討委は答申で、実質黒字を確保という条件つきでレース継続の可能性を残す一方、賞典奨励費のさらなる削減を条件に加えた。

■先細りの移籍先

 地方競馬の衰退は激しく、もし福山競馬が廃止になれば、次の移籍先を探すのは容易ではないという。

 「答申が出て以来、ずっと心の中に不安がある。だけど、朝から晩までそんなことを考えていたらレースにならない」。競馬を楽しみに来るファンのため、さこ畑騎手はそう自分に言い聞かせ、毎朝の馬の調教と自身のトレーニングに専念する。

 今月15日には長女が生まれた。「いつまで走れるか分からないが、できることなら、自分が馬に乗っている姿を娘にも見てほしい」

 今月初め、騎手や調教師らでつくる「福山競馬関係団体連合会」の代表らが、福山競馬の存続を求める約1万4千人分の署名を市に提出。「我々には競馬しかない。市長には存続を判断してほしい」と要望した。羽田市長は答申や今年度の収支状況を踏まえ、年度内にも存廃を判断すると表明している。 (朝日新聞)
【写真】早朝、馬場へ調教に出るさこ畑雄一郎騎手=福山市千代田町1丁目の福山競馬場

2010年10月23日土曜日

荒尾、佐賀競馬がレース共催 来春まで25回

 荒尾競馬(熊本県荒尾市)と佐賀競馬(佐賀県鳥栖市)は21日、双方の所属馬や騎手が参加する超短距離の交流レース「九州スーパースプリントシリーズ」を29日の荒尾競馬を皮切りに開催する、と発表した。

 地方競馬の経営悪化に伴い単独でのレース開催が困難になる中、運営する自治体が異なる複数の競馬場で常時開催の交流レースを新設する初めての試み。赤字を抱える荒尾、佐賀両競馬は経営効率化に向けて、将来の競走馬や騎手の共有化も目指す。

 レースは来年3月19日までに、両競馬場で計25回開催予定。通常よりも距離が短い900~950メートルの「超短距離走」となる。

 地方競馬全国協会(東京)は、佐賀競馬場と荒尾競馬場を往復する競走馬の輸送費を全額負担し、地域ブロック単位での交流レースを全国展開できるかを検証。来春以降に超短距離走の全国王者を決めるレースも開催したい考えだ。

 荒尾競馬組合は「超短距離走は勝敗が読みづらいのが魅力。全国の注目を集めるレースになれば」と期待を寄せている。(NEWS47)

福山競馬に新馬15頭

 存廃の岐路に立つ福山市営競馬(福山市千代田町)の競走馬オーナーでつくる県馬主会(八木徹会長)は、2011年度のレース開催を前提に、サラブレッドの1歳馬15頭を購入した。先行きが不透明な中、新馬の購入をためらう馬主もいるといい、関係者からは市に対して早期に存廃の結論を出すよう求める声も出ている。

 市競馬事務局によると、同競馬の競走馬は10月22日現在344頭で、1日11レースを3日単位で開催するためには、ぎりぎりの頭数。魅力あるレースを組むためには、新馬を毎年、50〜60頭購入するのが理想という。

 県馬主会では、会員が18〜21日、北海道浦河町の日高軽種馬農協で行われた競りに参加し、競走馬計15頭を各80万〜250万円で購入した。

 しかし、馬主の中には、「競馬がいつ廃止されるか分からない状況で無理もできない」と購入を控える意見も根強いといい、11年度に向けて競走馬をさらに購入するかは不透明だ。

 八木会長は「レース開催を維持するために新馬の購入は必要だが、市の方針が見えにくく、判断ができない。具体的な計画を早く示してほしい」と話している。

 福山市営競馬事業については、有識者らによる検討委が9月末、「速やかに廃止すべき」としながらも、黒字化の条件付きでの存続を認める答申を羽田皓市長に提出。羽田市長は「答申を尊重する」とし、11年度の予算編成までに一定の方向性を出す意向を示している。(読売新聞)

2010年10月20日水曜日

馬券販売の変化視野に 笠松競馬存廃で議論

 厳しい経営が続く笠松競馬(笠松町)について、県の古田肇知事は19日の定例会見で、地方競馬と日本中央競馬会(JRA)の馬券相互発売など馬券の販売環境の変化に関して「(存続を探る)シナリオの中で議論していく」との考えを示した。

 馬券の販売をめぐっては地方競馬と中央競馬が相互販売を検討している。各地の地方競馬では来年度から共同で販売システムを運用することで経費を削減。加えて中央競馬との相互販売で収益増を期待している。

 累積赤字を抱え、存廃が問題になっていた北海道営ホッカイドウ競馬は相互販売に伴う収支改善を1つの根拠に、来年度以降の存続を決めている。

 古田知事は「六千数百万円の赤字補てん財源の範囲内で(存廃を)議論する」と述べ、あくまで単年度収支を判断の基本とする考えを改めて説明。11月8日に開く笠松競馬推進協議会で販売促進や経費削減のシナリオを示すといい、「道はかなり険しいが、意見を出し合って乗り越えていければ」と述べた。

 その上で、2010年度を乗り切った場合に、馬券販売システムの変化を視野に入れた来年度以降の道筋を検討する考えを表明。「どの時点でどの程度、収入に反映されるか。確固たるスケジュールがあるわけではなく、どの程度期待できるか丁寧に詰めないといけない」と話した。(中日新聞)

2010年10月15日金曜日

浜松に場外馬券場開設 来年4月 駅周辺、にぎわい創出 静岡

 日本中央競馬会(JRA)が来年4月に場外馬券売り場を浜松市中区の商業ビルに開設することが14日分かった。地元関係者によると、市や浜松中央署、地元自治会とほぼ合意に至ったという。浜松市は郊外の大規模商業施設に客足を奪われ、中心部が空洞化するドーナツ化減少が顕著で、駅周辺の“にぎわい創出”が急務となっている。

 JRAが浜松市に開設する場外馬券場は「エクセル」と呼ばれ、利用者を先着順に限定する有料定員制の売り場。土曜と日曜の両日のみ開かれ、座りながらレースの様子をモニターでみることができるのが特徴だ。

 JRAは浜松駅から徒歩5分程度の商業ビル「かじ町プラザ」の4階に売り場を設けることで地権者と合意。定員を800人とし、払い戻し機械は入り口の外に設けることで設計に入ったという。

 地元、鍛冶(かじ)町の関係者は「JRAは来年5月の日本ダービーに間に合わせたいと話している」といい、来年4月下旬にはオープンの予定だ。地元周辺も「人が集まるなら」と歓迎しているという。

 かじ町プラザでは、イトーヨーカドーが平成19年に撤退。パレマルシェも21年にわずか7カ月で撤退し、広大な空きスペースが残った。周辺も13年に閉店した老舗百貨店「松菱」の跡地に大丸が23年秋開業で出店の予定だったが、投資に見合う収益が見込めないとして断念、跡地はそのままになっている。

 「エクセル」誘致は消費低迷が続く衣料や雑貨ではない「新たな試み」と評価される半面、「風紀上、問題」「土日開催のため、集客効果は限定的」との声もある。場外馬券売り場に集まる人をどう地域の活性化に結びつけるか。地元と周辺を巻き込んだ議論がさらに必要になりそうだ。JRAは「検討中。具体的な案件の状況についてはコメントを控える」と話している。()

2010年10月10日日曜日

佐賀競馬、荒尾と交流レース 出走馬増やし短距離戦

 人気低迷と売り上げの減少で経営難にある佐賀競馬(鳥栖市江島町)と荒尾競馬(熊本県荒尾市)が、10月末の開催日から定期的な交流レースを開始することで基本合意した。所属の競走馬が減っているため、「九州競馬」の連携で出走頭数を確保し生き残りを図る。
 地方競馬では、南関東の4競馬場が増収策として交流レースを続けているが、経営難から連携するのは初めて。地方競馬全国協会(東京)は今回の交流レースにかかる馬の輸送費相当分を補助金で支援する。
 佐賀競馬は9月末現在、515頭の競走馬を持つが、ピーク時の約700頭からすると3割減。荒尾は291頭で、ともに出走馬が似たような顔ぶれになって、レースの魅力が薄れる原因にもなっている。
 交流レースは29日の荒尾、30日の佐賀で1レースずつ実施。11月以降来年の3月まで合計25レースを予定している。通常より短い千メートル未満の「スーパースプリントシリーズ」と銘打って実施。トップスピードの迫力あるレースを演出する。
 荒尾は約14億円の累積赤字を抱え、出走手当の削減などで経営の立て直しを模索中。佐賀は昨年度約6800万円の赤字になり、本年度予算から繰り上げ充当をした。累積赤字には陥っていないものの、本年度も売り上げ、入場者数が減少している。
 佐賀競馬組合は「これまで荒尾と交流できる状況にありながら実施してこなかった。コスト削減と資源の共有効果を狙う」と話し、荒尾競馬組合は「新たな視点のレースがファンに受け入れてもらえれば、全国発売の売り上げ増につながる」と期待する。 (佐賀新聞)

荒尾競馬の存廃 正念場…出走手当引き下げ 出走手当問題で存廃の岐路に立つ荒尾競馬


 荒尾競馬組合(管理者・前畑淳治荒尾市長)が8月、経営立て直し策の一つとして、馬主側に支払う出走手当を一律1万5000円引き下げた問題は、反発した馬主側が近く、玉名簡裁に調停を申し立てる事態となった。競馬場の存廃にかかわるだけに、推移が注目される。(村田和夫)

 荒尾競馬は、1997年の三池炭鉱の閉山に伴い、入場者、売り上げとも減少に転じ、98年度から赤字に転落。昨年度までの累積赤字は約14億円に達した。荒尾市からの貸付金は年々膨らみ、今年度は11億円。市の財政運営を圧迫する要因となり、「荒尾競馬あり方検討会」(会長・荒井勝彦熊本学園大教授)は昨年10月、「収支改善の見込みが困難と判断した場合は2011年度を待たずに存続断念を視野に入れるべきだ」と提言した。

 だが昨年度は約4500万円の赤字、存廃を判断する正念場となった今年度も毎月1000万円、年間で1億円強の赤字の見通しとなった。

 組合は、出走手当の引き下げで約5800万円の削減効果を見込み、他の経費を抑えれば今年度分の赤字を回避できると判断。7月に開かれた馬主への説明会で、前畑市長は「競馬を続けていくためには今年度の収支均衡が大命題だ」と理解を求めた。

 出走手当は8月21日開幕の第7回大会から引き下げられた。組合は昨年4月にも一律5000円を減額したが今回はその3倍に当たる。このため、馬主186人で組織する県馬主会側は「我々に負担を押しつける前に、組合側が人件費削減など運営努力をすべきだ。施設を改善したり、職員の教育を徹底して入場者数、売り上げ増を図れ」と反発した。林田三男副会長は「我々は現状でも1頭につき60万〜70万円の赤字だ。それでも出走させているのは馬が好きで、厩務員(きゅうむいん)や騎手らの生活もかかっているからだ」と言う。

 荒尾競馬場では採算が見込めないとして、佐賀など他の競馬場に所属を替える馬主も出てきている。

 荒尾競馬場の16厩舎に所属する馬は9月現在、283頭。ここ数年350頭前後で推移していたが、8月に300頭を割り込んだ。馬の数が減れば、世話する調教師、厩務員の手当にも影響する。今は1レース5〜8頭立てで、1日10レースを組んでいるが、200頭を割り込むようなことになれば、レースそのものが成り立たなくなる恐れも出てくる。

 組合は、場外売り場の運営システムや場内管理委託を見直して経費削減を進めたり、売り上げを増やすための工夫に取り組んだりしている。一方、馬主会側には出走回数を増やすことで手当が減った分を補ってもらおうと提案しているという。ただ、今のところ、議論は平行線をたどったままだ。

 荒尾競馬が始まって今年で82年。その収益から市、県の予算に繰り入れられた額は約91億3000万円に上る。競馬に関心がない市民にとっても、その存廃は決して人ごとではない。(読売新聞)

2010年10月8日金曜日

高知競馬:本場の売り上げ減 出走馬も減、課題山積--運営状況

 ◇生き残りへ ナイター、交流レースも

 生き残りをかけ、経費削減やナイター開催を打ち出してきた高知競馬(高知市長浜宮田)。県は6日、県議会産業経済委員会で、今年度(9月26日まで)の運営状況から年間約2600万円の黒字となる見通しを報告した。しかし、本場発売所の売り上げ減など課題は山積。集客数アップへの対策を迫られている。
 県競馬対策課によると、1日当たりの平均入場者数は、今年度666人。「夜さ恋ナイター」が始まった昨年7月以降、1日当たりの売り上げなどに順調な伸びが見られたが、昨年度の平均入場者数814人を下回っている(08年度959人)。自場開催96日のうち92日がナイターで、比較的多かった昼間の利用者が来なくなったことも影響しているとみられる。
 一方、急増しているのがインターネット・電話投票だ。売り上げのうち、ネット・電話が2割、本場(パルス高知など場外販売所含む)が7割だった08年度に対し、今年度はネット・電話6割、本場3割。ネット・電話の場合、委託先2社への委託料(売り上げの11~13%)がかかり、「収益は伸びた見かけほど良くない」(同課)という。
 競走馬の確保も急務となっている。07年度に累積赤字を出したことを受け、県は08年度、2億5000万円の経費を削減した。出走手当も1割カットの2万7000円とし、賞金も減額したことなどから出走馬数が激減。今年のレース数は10レースと昨年度から1減し、5頭だて、6頭だてが頻発した。厳しい経営が予想される中、今年7月、県は出走手当を今年3万2700円に増額した。
 削りに削った結果黒字となったものの「この状況が続くとしんどい」と同課。全国唯一ナイターを通年開催することから冬場の売り上げ増が期待され、今後も正月開催でのイベントやJRA(日本中央競馬会)との交流競走「黒船賞」などを予定する。西岡幸生課長は「競馬場で見るのが競馬のだいご味。にぎわえば騎手らの励みにもなる」と話す。(毎日新聞)

荒尾、佐賀が交流競馬 馬、騎手共有 定期レース 10月末から

 地方自治体が手掛ける各地の地方競馬が経営難で存続の危機にある中、荒尾競馬(熊本県荒尾市)と佐賀競馬(佐賀県鳥栖市)が、10月末から毎月5レース程度、競走馬を行き来させて「交流レース」を開催することが7日分かった。「自治体単位」が原則だった地方競馬の「地域ブロック化」により、人や馬といった経営資源を共有しコスト削減を図る生き残り策。地方競馬全国協会(東京)によると、定期的な交流レースの形で経営効率化を図るのは全国初の試みという。

 地方競馬は長年、主催する自治体の貴重な収入源だったが、近年はレジャーの多様化などで採算性が悪化。大分県の中津競馬の撤退(2001年度)など各地で閉鎖が相次いでいる。協会は今回の“九州競馬”をモデル事業として、両競馬場間の馬の輸送費を全額負担して支援する。今回の試みが好評なら、11年度以降、ブロック化を全国展開したい考えだ。

 09年度現在、地方競馬の主催者は全国に16あるが、9主催者が累積赤字を抱える。荒尾競馬の累積赤字は約14億円、佐賀も約6800万円に上る。協会によると、ブロック化は出走馬や施設の共同利用によるコスト削減のほか、互いのレースへの出走頭数が増える分、バラエティーに富んだレース編成が可能になり、ファン層拡大や収益アップが期待できるという。

 レースは通常の3分の2にあたる千メートルの超短距離となる見通し。両競馬場の出走馬に多少の力の差があっても、勝敗を読みにくくするためだ。荒尾、佐賀の両競馬組合は「“九州競馬”が先進例になって地方競馬の活性化の流れをつくりたい」としている。

■地方競馬

 1948年施行の競馬法に基づき、地方自治体が一部事務組合を設立するなどして運営する。監督官庁は農林水産省。地方競馬全国協会が、競走馬の登録業務などを担当する。売り上げの約75%が馬券購入者への配当金で、残りが主催者側の収入。政府が資本金全額を出資する日本中央競馬会(JRA)による中央競馬に比べ、経営基盤が弱い分、賞金水準は低く優秀な馬は集まりにくい。(西日本新聞朝刊)

笠松競馬、赤字1億円に縮小 県が本年度収支見通し

 県は7日、笠松競馬(羽島郡笠松町)の本年度の収支見通しは約1億円の赤字になるとする上半期終了時点での経営シミュレーション結果を明らかにした。8月時点で見込んだ1億1700万円の赤字よりは縮小したが、赤字補てんに使える財政調整基金6600万円の全額を取り崩してもなお、3400万円の赤字が残る。

 県地方競馬組合は11月初旬に開く笠松競馬運営推進協議会に経費削減を含めた追加対策の選択肢を示す方針。

 古田知事は同日の県議会定例会で、「税金で赤字を補てんしないという前提からすると年度末を待たずにぎりぎりの判断をしなければならない」と述べ、現状のままでは廃止もあり得るとの可能性をあらためて示す一方、「財政調整基金の範囲内でいかに乗り切れるかを吟味する必要がある」として、存続策を探る考えを強調した。

 上半期の馬券発売額は約54億円で、1日当たりは前年同期比7.5%減少。下半期も同じマイナス率で推移すると年間発売額は前年比8億円減の111億円になると推計した。

 4億2000万円の特定目的基金を取り崩して競馬存続の財源とすることについては「借金の合計は6億8000万円で、すでに2億6000万円の債務超過。特定目的基金を赤字補てんに使い切って残った借金は競馬廃止となった場合、税金で負担することになるため、慎重にならざるを得ない」と述べた。田中勝士議員(県民ク)の質問に答えた。(岐阜新聞)

笠松競馬:経営状況「極めて危機的」 知事、厳しい見方示す

 存廃問題が再浮上している笠松競馬(笠松町)の経営状況について、古田肇知事は7日の県議会で「本年度末を待たずしてぎりぎりの決断をしなければならない極めて危機的な状況」と、厳しい見方を示した。
 今後の運営方針については、「決して廃止に向けた手続きではない」と廃止ありきで検討する考えは否定。だが、同時に施設整備の借金返済に充てる基金約4億2000万円の切り崩しには「極めて慎重にならざるをえない」と述べた。
 さらに、「(経営改善のためには)どのような対策をいつまでに追加実施しないといけないか、早急に議論しないといけない」と、存続にはさらなる経営努力が必要だとの考えを強調した。
 笠松競馬は、馬券売上額が上半期と同じペースで下半期も推移すると、年間では過去最低の111億円となり、約1億円の赤字計上が見込まれる。一方で、現在確実に赤字補てんに使える基金は6600万円しかないという。(毎日新聞)

2010年10月7日木曜日

存続か廃止か…金沢競馬の議論が本格化

 金沢競馬の経営状態を検討する委員会が6日、開かれ、委員が競馬場を視察しました。金沢競馬は2007年度からの3年間で経営を黒字化できなければ、廃止が検討されることになっていました。最初の2年間は黒字でしたが昨年度は赤字に落ち込みました。しかし、昨年度についてはリーマンショックなどの影響が大きかった要因もあるとして存続か廃止かの判断は今年度に先送りされています。この日は、金沢競馬の経営状態を検討する委員会が競馬場を視察し、一部、老朽化した施設の実態を確認しました。今年度は県営開催レースの中間収支が3000万円の赤字となるなど、厳しい経営が続く金沢競馬。視察後の会議では委員から、老朽化した施設を改修するとしてどれだけの費用が必要になるのか、県に回答を求める場面もありました。(北陸朝日放送)

第三者機関新設へ 県と2市、経営安定化策探る 岩手競馬

 岩手競馬の経営安定化へ向け、関係自治体の県と盛岡、奥州両市は近く、弁護士や会社経営者ら約10人による第三者機関を新たに設置する。達増拓也知事が県議会の一般質問で明らかにした。
 岩手競馬の経営状況を問われた達増知事は「有識者らによる客観的な視点と専門的な検証で、安定経営に向けた方策を考えたい」と述べた。
 第三者機関の名称や権限、メンバーは今後、県などの構成団体が詰める。民間の知恵を生かし、売り上げの減少を踏まえて新たな増収策を探ってもらう。
 県には既に、2007年度に設置した第三者機関「県競馬組合事業運営監視委員会」がある。大学教授、公認会計士、弁護士ら委員4人が経営状況のチェック作業に当たっているが、今回設置する機関とどう役割分担を図るかが課題となる。
 岩手競馬は本年度、2度の計画変更によるコスト削減を実施。今月4日までの81日間の開催で、発売額は前年度同期比7.0%減の123億6600万円、入場者数は14.8%減の80万3720人と苦戦が続く。(河北新報)

経営評価委員 金沢競馬場を視察


 この日は委員6人が同競馬場を視察した。県の職員から施設の概要などの説明を受け、実際に馬券売り場やスタンド付近を確認。さびや地盤沈下など老朽化が進む施設について、委員から「修繕にはどれくらいの予算が必要なのか」などの質問も出た。

 その後、開かれた会議では「活気があってファンサービスも進み、いい印象を受けた」という声が出る一方、「今後の施設維持やファン層などを考えると、将来は厳しい」という悲観論もあった。(朝日新聞)
【写真】金沢競馬(金沢市八田町)の経営状況を検証する2回目の経営評価委員会が6日、同競馬場で開かれた。

高橋はるみ知事が事業の存続表明、年度内に長期ビジョンを策定


 昨年度まで242億円の累積赤字を抱え、事業廃止の危機に瀕していた「道営ホッカイドウ競馬」が、来年度以降も存続することが正式に決まった。

 高橋はるみ知事は、6日に開かれた道議会予算特別委員会で、今年度の収支が赤字だった場合、廃止する見込みだった競馬事業を、収支均衡の公算が大きいことなどから存続させる意向を表明した。

 道は、ホッカイドウ競馬を赤字体質から脱却させるため、2008年3月に「北海道競馬改革ビジョン」を策定、さまざまなコスト削減や発売拡大策を講じてきた。改革ビジョンに示した単年度赤字の解消期限は3年間。最終年となる今年度は、札幌開催を休止、全レースを門別競馬場(計80日間)に集約し、収支均衡を目指している。

 収支均衡のために必要な今年度の目標(発売計画額)は119億5000万円。9月末時点(計59日間)の発売額は、前年同期比98.8%の79億9400万円にとどまっている。

 ただ、総収入には南関東競馬などの馬券販売で得られる業務協力金や昨年度の繰越金などがわる。また計画よりも発売が少ないため、払戻金や場外発売所使用料などの支出が減少する見込みで、今年度の収支はほぼ均衡する見通しだ。

 道競馬事業室は「改革ビジョンに基づいた取り組みによって赤字体質の転換が進み、収支均衡が見通せる段階まできた。また全国的な動きとして、来年度から全国16の地方競馬主催者が共同で馬券を販売する新システムを導入することが検討されており、ホッカイドウ競馬とJRA(中央競馬会)の相互販売に向けた協議も進んでいる。ホッカイドウ競馬の重要性と収支均衡、発売環境の強化などを総合的に判断して来年度以降の存続が決まった」と説明する。

 競走馬の生産は日高・胆振管内の基幹産業として、地域の経済や雇用に寄与している。またホッカイドウ競馬からは多くの馬が中央・地方競馬に移籍しており、日高・胆振の馬産地は競走馬の供給基地としての役割を果たしている。

 高橋知事の存続表明を受け、三輪茂日高町長は「日高、胆振の経済、雇用、観光が守られ、馬産地の人が救われたことに安堵している。来年度以降については、道が期限や条件を設けずに安定的、継続的に競馬事業を運営していく方針を示すことが大事だ」と語った。

 道は来月、知事の付属機関で専門家らが道営競馬のあり方を考える「北海道地方競馬運営委員会」を開き、来年度以降の事業内容を検討する。「単年度ではなく長期的な視点から競馬事業の新たなビジョンを年度内に策定する」(道競馬事業室)方針だ。(北海道365)
【写真】昨年4月に増設された門別競馬場のスタンド(通称「ポラリス☆ドーム」)

福山競馬の歩みパネルで紹介


 福山競馬で活躍した歴代の名馬などを紹介する「福山競馬の歴史パネル展」が、福山市緑町の天満屋ハピータウンみどり町店で開かれている。31日まで。無料。

 過去30年間の優勝馬などA3判の写真約200枚を並べた。1980年代に圧倒的な強さを誇ったローゼンホーマの力強い走りや、91年に福山競馬に出場した武豊騎手の写真もある。

 競走馬の顔を覆う面子(めんこ)や蹄鉄(ていてつ)、騎手が使うステッキ、ブーツも展示している。

 存廃が議論されている福山競馬に関心を高めてもらおうと同店が企画した。23日午前11時〜午後3時には、同店駐車場でポニーと無料で記念撮影できる。

【写真説明】歴代の名馬の活躍を紹介する写真パネルに見入る来店者

2010年10月2日土曜日

署名簿添え競馬存続を要望 広島

 福山市営競馬検討委員会が「条件付き廃止」を答申したことを受け、同競馬関係団体連合会(渡辺貞夫会長)は1日、1万4236人の署名を添えて存続を求める要望書を羽田皓市長あてに提出した。

 要望書では「現在の仕事に誇りと愛着を持っており、伝統ある福山競馬を守っていきたい」としている。

 この日は代表5人が市役所を訪れ、市議会の徳山威雄議長にも同様の要望書を手渡した。渡辺会長は「署名はファンが存続を後押ししてくれるメッセージ。一致団結して難局に当たりたい」と話した。(産経ニュース)
 

「夢、目標へ頑張って」大津の小学校 落馬で障害 福留さん講演


 落馬事故で下半身不随の障害を負いながらも、障害者乗馬の普及活動に取り組んでいる元調教助手の福留健一さん(40)=栗東市川辺=の講演会が1日、大津市立仰木の里東小(堤三枝子校長)で開かれ、6年生123人が聞き入った。

 福留さんは2008年9月、調教中に落馬し、車いすの生活に。一時は自殺も考えたが、家族や友人に支えられてリハビリに励んだ。

 今年4月には、再び馬に乗れるまでになった。現在は、障害のある人が乗馬でリハビリ効果や心の安らぎなどを得ることを目指す「障害者乗馬」の普及を行う団体「レインズ」の代表として、馬の育成などを行っている。

 講演で、福留さんは「事故に遭ったからこそ、人の優しさ、温かさを知ることができた。馬に携わる仕事と、障害者に役立つ仕事ができている私は恵まれている」と語った。

 また、乗馬でパラリンピックに出場するのが夢といい、「障害があっても、出来ることがある。みんなには可能性がもっとある。夢や目標に向かって精いっぱい頑張って」と呼びかけた。

 仲程潤弥君(11)は「家族、友達への感謝の気持ちを大切にしないといけないと感じた」と言い、吉川愛真(あみ)さん(12)は「あきらめない挑戦心に勇気づけられた」と話していた。(読売新聞)
【写真】児童たちの前で経験を話す福留さん(大津市立仰木の里東小で)