2010年10月10日日曜日

荒尾競馬の存廃 正念場…出走手当引き下げ 出走手当問題で存廃の岐路に立つ荒尾競馬


 荒尾競馬組合(管理者・前畑淳治荒尾市長)が8月、経営立て直し策の一つとして、馬主側に支払う出走手当を一律1万5000円引き下げた問題は、反発した馬主側が近く、玉名簡裁に調停を申し立てる事態となった。競馬場の存廃にかかわるだけに、推移が注目される。(村田和夫)

 荒尾競馬は、1997年の三池炭鉱の閉山に伴い、入場者、売り上げとも減少に転じ、98年度から赤字に転落。昨年度までの累積赤字は約14億円に達した。荒尾市からの貸付金は年々膨らみ、今年度は11億円。市の財政運営を圧迫する要因となり、「荒尾競馬あり方検討会」(会長・荒井勝彦熊本学園大教授)は昨年10月、「収支改善の見込みが困難と判断した場合は2011年度を待たずに存続断念を視野に入れるべきだ」と提言した。

 だが昨年度は約4500万円の赤字、存廃を判断する正念場となった今年度も毎月1000万円、年間で1億円強の赤字の見通しとなった。

 組合は、出走手当の引き下げで約5800万円の削減効果を見込み、他の経費を抑えれば今年度分の赤字を回避できると判断。7月に開かれた馬主への説明会で、前畑市長は「競馬を続けていくためには今年度の収支均衡が大命題だ」と理解を求めた。

 出走手当は8月21日開幕の第7回大会から引き下げられた。組合は昨年4月にも一律5000円を減額したが今回はその3倍に当たる。このため、馬主186人で組織する県馬主会側は「我々に負担を押しつける前に、組合側が人件費削減など運営努力をすべきだ。施設を改善したり、職員の教育を徹底して入場者数、売り上げ増を図れ」と反発した。林田三男副会長は「我々は現状でも1頭につき60万〜70万円の赤字だ。それでも出走させているのは馬が好きで、厩務員(きゅうむいん)や騎手らの生活もかかっているからだ」と言う。

 荒尾競馬場では採算が見込めないとして、佐賀など他の競馬場に所属を替える馬主も出てきている。

 荒尾競馬場の16厩舎に所属する馬は9月現在、283頭。ここ数年350頭前後で推移していたが、8月に300頭を割り込んだ。馬の数が減れば、世話する調教師、厩務員の手当にも影響する。今は1レース5〜8頭立てで、1日10レースを組んでいるが、200頭を割り込むようなことになれば、レースそのものが成り立たなくなる恐れも出てくる。

 組合は、場外売り場の運営システムや場内管理委託を見直して経費削減を進めたり、売り上げを増やすための工夫に取り組んだりしている。一方、馬主会側には出走回数を増やすことで手当が減った分を補ってもらおうと提案しているという。ただ、今のところ、議論は平行線をたどったままだ。

 荒尾競馬が始まって今年で82年。その収益から市、県の予算に繰り入れられた額は約91億3000万円に上る。競馬に関心がない市民にとっても、その存廃は決して人ごとではない。(読売新聞)