2010年7月27日火曜日

岩手競馬 今年も経費削減 4年連続に関係者「もう限界」


 岩手競馬の売り上げの減少に歯止めが掛からない。予想を超える収入の落ち込みで、岩手県競馬組合は7月上旬、本年度3億1000万円の赤字になる見通しを表明した。存続条件である「収支均衡」のためとはいえ、コスト削減は今年で4年連続となり、関係者からは「もう限界」との声が漏れ始めている。(盛岡総局・遠藤正秀)

<危機感あらわに>
 「経費節減だけでは限界だ。魅力がなくなれば、収入も減り続ける。いい馬を確保するため、もっと思い切った賞金を出すレースが必要だ」。今月6日に行われた県競馬組合の運営協議会。経費節減の方針を受け、委員の1人は危機感をあらわにした。
 組合は、かつて看板レースだった「ダービーグランプリ」を今年11月に復活させることを決めていた。地方競馬としては破格の1着800万円の賞金を設定。借金などできる状況ではないが、収支のやりくりで何とか開催にこぎつけるめどが立った。
 ダービーグランプリの復活だけでは不足とみる委員の発言に、岩手競馬の危機的状況が浮かび上がった。協議会後に、ある委員は「こつこつと増収策を考えていくしか道は残されていない」とため息交じりに語った。

<地道な努力を>
 現場も気をもむ。「先が全く見通せない状況。せめて子どもが社会人になるまでは存続してほしい」と語るのは、岩手競馬の厩舎(きゅうしゃ)で働く40代の男性厩務員。
 男性は2人の10代の子どもを持つ。基本給は月18万円。4年前と比べて2万5000円下がり、面倒を見る馬がレースで手にする賞金や出走による手当などを合わせても、手取りは月25万円に満たない。
 一方で、仕事は厳しさを増すばかりだ。厩舎の従業員はこの4年で100人減り、半分となった。馬の数はほとんど変わらない分、仕事は増えた。
 「馬が好きだし、いいレースをしたいという思いで必死で働いている。経営状況が好転するのを待つばかりだ」と遠くを見つめた。
 暗いトンネルに入った岩手競馬の活路。関係者は「だからこそ、普段からレースの醍醐味(だいごみ)を伝える地道な努力が必要だ」と力説する。
 14日夜には水沢競馬場のクラブハウスを開放し、パブリックビューイングを開催した。「ジャパンダートダービー」(東京・大井競馬場)に出走した岩手競馬所属のロックハンドスターを応援するため、平日にもかかわらず約80人のファンが集まり、声援を送った。残念ながら9位に終わったが、売り上げは好調だった。
 会を発案した地元競馬専門誌「テシオ」の松尾康司編集長は「魅力あるレースには、必ずファンが集まる。経営状況に萎縮(いしゅく)することなく、いいレースをすることが重要だ」と手応えをつかんだ。
 盛岡競馬場を含めた2場開催から1場開催への転換や、2008年に模索した運営の民間委託を封印した岩手競馬。限られた予算の中で、増収に向けた活路を見いだす暗中模索が続いている。

[岩手競馬の売り上げ]盛岡競馬場建設費など約330億円の累積債務を抱え、岩手県などから融資を受ける条件として、赤字を出さないための「単年度収支の均衡」を求められている。売り上げは1991年の689億円をピークに減少の一途で、本年度は200億円を割り込む見通し。存続のために2007年から4年間で計8回、17億円以上を削減したことになり、今季は2億4700万円を削る。(河北新報)
【写真】水沢競馬場で開かれたパブリックビューイング。有効な増収策が求められている。