2008年10月17日金曜日

民間委託拡大白紙へ 岩手競馬がユニシスと協議断念

 岩手競馬の民間委託拡大で、県競馬組合管理者の達増知事は16日、交渉先の日本ユニシス(東京)が示した提案について「今回の提案では判断が難しい」と述べ、事実上、同社との協議を打ち切る意向を示した。日本ユニシスは同日、盛岡市内で記者会見し、組合側に回答した提案内容を説明したが、委託判断の基本となる収支見通しは示さなかった。組合側は同社の提案と現行方式を比較した上で最終判断する方針だが、ユニシスの提案は判断材料に乏しく、来年度も現行方式での運営が確実な情勢だ。
 日本ユニシスの矢島洋一産業機構研究所長、山下良一法務部長ら3人が盛岡市内丸の県公会堂で会見し、14日に県競馬組合に示した事業計画案について説明した。
 主な内容は、出走手当を地方競馬では全国最低クラスの一律5万円に引き下げる一方、1着賞金を南関東に次ぐ水準まで引き上げ、最低1着賞金は現行の14万円から35万円に増額。現在、5着までが対象の賞金を4着までとし、賞金比率を現行より高い方式に引き上げる―など。
 競走関係は▽年間の開催日数を現行の131日から88日に減らす▽1日最低9レースとし日曜、月曜に開催▽現行5クラスの格付け区分を3クラスに変更する―とした。
 しかし、組合側が求めていた収支見通しについては示さなかった。その理由について矢島所長は「今の段階では、過去の数字を基に売り上げを算出するのは意味がない」とし、「現在、組合と随意契約している業者との交渉もしていないので、収支見通しは示せない」と説明した。
 ユニシス側の提案について、組合副管理者の谷藤裕明盛岡市長は「具体的な収支見通しが示されず残念だ。発売額や馬資源の確保などに懸念される点もある」、奥州市の岩井憲男副市長は「収支見通しなど具体のデータがないのであれば、厳しい局面にきたと見ざるを得ない」と否定的な見解を示した。
 達増知事は「今まで求め続けて出てきたのが今回の提案。組合としては、この提案で契約交渉に入るか判断するしかない」と、これ以上、ユニシス側に具体案を求めることはしない考えを示し、今回の提案についても「レース数を減らして、(大幅に)1レース当たりの売り上げを高めることが可能かは疑問だ」と述べた。
 県競馬組合は、今回の提案を厩舎(きゅうしゃ)関係者らに提示し、意見を聞いた上で正副管理者会議を開き、来年度の運営方式について月内に最終判断する。