2008年10月31日金曜日

連合との懇談会開催

-今後の日本経済の見通し、雇用・働き方等で意見を交換
 日本経団連は20日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、高木剛会長)との懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗冨士夫会長をはじめ、三村明夫副会長、渡文明副会長、大橋洋治副会長、岩沙弘道副会長、清水正孝副会長、鈴木正一郎評議員会副議長、三浦惺評議員会副議長、指田禎一労使関係委員会共同委員長、市野紀生労使関係委員会共同委員長らが、連合からは高木会長をはじめ、会長代行、11名の副会長や事務局長ら、あわせて35名が参加した。今回の会合では、(1)景気の動向と今後の日本経済の見通し(2)雇用・働き方等について(3)少子化対策、税・社会保障について――をテーマに自由な意見交換を行った。
会合の冒頭、御手洗会長は、「アメリカに端を発した金融危機で世界経済が減速傾向を強める中、日本経済も停滞の色を濃くしている」との認識を示すとともに、懇談のテーマである少子化対策、税・社会保障について触れ、「日本の将来にかかわる大変重要なテーマであり、理想的なあるべき姿、望ましい制度について率直な意見交換をしたい」と述べ、同会合が労使双方の相互理解の場となり、有意義な意見交換となることへの期待を表明した。
続いてあいさつした連合の高木会長は、「国際金融問題だけでなく、各国の実体経済の悪化も踏まえた国際協調が今求められているのではないか」と述べた上で、労働組合の国際組織とグローバル企業が社会的責任に関する条項を締結するグローバル枠組み協定(GFA)などに取り組む必要があるとの見解を示した。
■ 景気の動向と今後の日本経済の見通し
両会長のあいさつの後、まず「景気の動向と今後の日本経済の見通し」について意見交換を行った。
連合からは、(1)物価高により実質所得が低下すれば、個人消費はさらに落ち込み、日本経済はますます悪くなる可能性がある(2)配分構造の是正に視点を当てながら、内需の拡大に向け政労使が最大限の努力をする状況にある(3)中小企業の資金繰りについては信用保証枠、信用保証額の増額を用意する必要がある(4)投機ファンドの透明性ならびに制御機能を確保すべきである(5)中小企業の労働条件を引き上げていくことが求められており、そのためには公正取引が基本である――などの意見が出された。
一方、日本経団連からは、(1)金融危機が発生して以降、状況は一変している(2)実体経済の減速懸念が著しく高まっており、わが国政府、金融当局に対しても、各国政府当局との緊密な連携の下、適切に対処するよう求めたい(3)世界経済全体が悪い中で、日本経済をどのように回復させていけばよいのか極めて難しい命題であり、このような時期においては、労使が痛みを分かち合いながら、日本経済の体質強化を図っていくことが必要である(4)中小企業の資金繰り支援の拡充や、低所得者への減税など、緊急かつ思い切った対策の実行を求めていかねばならない――などの発言があった。
■ 雇用・働き方等
「雇用・働き方等」については、連合から、(1)雇用労働の改善は社会の安定につながり、生産性向上、消費の拡大に寄与すると確信している(2)管理職増産の時代は終わったという認識を労使が共有化し、管理監督者の範囲について具体的な改善を進めることが重要である――などの意見のほか、ワーク・ライフ・バランスをさらに推進するため数値目標を活用すべきとの意見が出された。
これに対して日本経団連からは、(1)各企業では既にワーク・ライフ・バランスの推進に向けたさまざまな取り組みを始めており、それぞれの業種・業態などに応じた多くの好事例、先進事例が出てきている。今後、こうした事例を企業間で情報共有し合い、より積極的に推進していきたい(2)新卒一括採用のデメリットを補完するために、将来を背負って立つ若年者に対して、学校教育の段階から職業観を醸成し、意欲や希望、能力、適性に応じて、適切な職に導いていく努力が、引き続き重要である(3)全員参加型社会の実現をめざして、パートタイム労働者が働きがいを感じながら勤めることができるよう、雇用管理改善の取り組みをさらに進めていきたい――などの発言があった。
■ 少子化対策、税・社会保障
「少子化対策、税・社会保障」については、連合から、(1)子育て環境の整備で最も恩恵を受けるのは企業であり、企業が財政面でも積極的な役割を担うべきである(2)中低所得者に対する減税が必要であるとともに、単年度ではなく恒久的な税制とすることが重要である――などの意見が出された。
一方、日本経団連からは、(1)超高齢化社会が目前に迫る中、世代間扶養のシステムから国民全体で支える公費負担中心へと軸足を移していくなど、将来を見据えた改革に着手しなければならない(2)社会保障制度の将来像を示し、税制・財政と一体となった改革の中で、消費税によって増大する社会保障費用を賄うことへ理解を得ていくことが不可欠である(3)将来の社会の担い手を育成するというわが国の重要課題に向け、必要となる安定財源を確保し、少子化対策への公費投入を拡充すべきである――などの意見があった。
会合の最後、総括のあいさつの中で高木会長は、「日本の経済・社会の状況を改善するために、日本経団連と連合で何か一緒に取り組めることはないか」と述べ、今後も継続して議論を深めたいとの考えを示した。これに対し御手洗会長は、「方法論では違いがあるかもしれないが、日本の経済を立て直さなければならないということに対する認識は全く共通である」と述べ、定期会合のほかに、高木会長から提案のあった見直しの取り組みのあり方について、事務局ベースで議論を行うこととしたいとの見解を示した。(日本経団連タイムス)