2013年1月23日水曜日

福山競馬廃止  難題山積み

▲競馬事務局内に設けられた総合相談窓口
(福山市の福山競馬事務局で)

 福山市が福山競馬の廃止を表明してから26日で2か月となる。市は調教師や厩務(きゅうむ)員ら関係者の再就職を支援するため、昨年12月21日に福山競馬事務局に総合相談窓口を設けたが、年齢制限や資格条件もあり再就職は簡単ではない。競馬関係者に支払われる協力金の額も、市の提示額と関係者の要望には開きがある。さらに、所属する競走馬の行方も決まらず、問題は山積している。
[再就職]
 福山競馬の関係者は約700人、うち廃止によって直接職を失う調教師や騎手、厩務員らは114人(2012年4月現在)。総合相談窓口では、求人情報を紹介したり生活面の相談に応じたりしている。競馬事務局によると、18日現在で、のべ利用者数は63人。再就職先が決まっている人はいないという。
 50歳代の厩務員男性は「駅前のハローワークに行かずにすむので便利だ」と話すが、利用していない人からは「廃止の実感がわかない」「レースが開催されており、転職を考える余裕がない」などの声があった。
 県調騎会の渡辺貞夫元会長(64)は「相談しても学歴や資格がない者に仕事はない。もっと本気で支援して」と言う。
 市幹部は昨年末から福山商工会議所などを訪れ、雇用の協力を呼びかけ、清掃業者やタクシー会社など9件の求人を得たという。全国の地方競馬14場に対しても文書で協力を要請した。
[協力金]
 市は昨年12月、協力支援金条例を制定し、原資として2億円を予算化。生活支援や住居移転費をもとに算定した協力金を、県馬主会や県調騎会など各団体ごとに提示したが、合意は得られていない。
 17日に市と2度目の協議をした県馬主会の岡田義見会長は「補償は競走馬1頭につき最低100万円は必要だが、市の提示と大きな開きがある」と話す。杉原郁充・競馬事務局長は「先行事例を参考に、市民理解が得られるような算定基準を設けた。話し合いを重ねたい」と話す。
[競走馬]
 福山競馬には約300頭の競走馬がいる。市は「全ての馬が、馬主の責任で他の競馬場などに転籍すると考えている」とするが、県馬主会によると、他競馬場や牧場などに移籍できるのは約100頭の見込み。残った競走馬はこのままでは殺処分せざるをえないという。
 福山競馬場厩舎管理規定では、使用期限の3月31日から原則1か月以内に厩舎を明け渡さなくてはならない。その間に全ての競走馬の行き先を決めることは難しく、また、輸送費やこの間のエサ代などの課題も発生する。市は「厩舎の使用期限は柔軟に対応する」としている。(読売新聞)