2008年12月14日日曜日

「大企業の非正規大量解雇、許されない」高木・連合会長


 世界的な不況を背景に、非正社員らを解雇する動きが止まらない。近年にない厳しい状況のなかで、働く人の雇用や暮らしを守るため、連合(組合員数675万人)は来春闘をどう戦うのか。高木剛会長に聞いた。
――非正規労働者の大量解雇に歯止めがかかりません。
 あってはならんことだ。一番頭に来ているのは、トヨタ自動車やキヤノンなど、中小に比べて体力のある大企業が、次々と非正規の人たちを大量に減らしていることだ。満期を待たずに中途解約する例も多い。数カ月の雇用すら継続できないほど、切迫しているのか。御手洗冨士夫・日本経団連会長は会見で「苦渋の選択」と言ったが、「苦渋」の中身が全く伝わってこない。
 仕事がないのに雇い続けろとまでは言わないが、在庫を持たないのと同じ感覚で人を安易に解雇していいのか。雇用全体の議論をしようと、2カ月以上前から経団連に申し入れている。「アメリカのせい」「あとは政府よろしく」じゃ許されない。
――非正規労働者はどう身を守ればいいのでしょうか?
 非正規の人に対しても、経営者が解雇回避の努力を尽くしたかどうかなど、正社員と同様な整理解雇の原則が適用されるべきだ。ただ、非正規の人たちに自分でそれを交渉せよというのは酷だ。企業の労働組合がそれは言っていかねばならない。自分たちが切られる立場になった時にも同じ武器で闘うのだから。
――派遣法などの規制緩和を許し、不安定雇用を増やした責任は連合にもあるのでは?
 規制緩和を止められなかったという批判は受けざるを得ない。不安定雇用の人を最小限に抑えねばならないという雇用の原則を、強く主張し続けられなかったことについては、ざんげしたい。ただ、製造業派遣を認めて派遣労働が急激に広がったころから、派遣法は「希代の悪法」になりかねないと、法改正を主張してきた。ようやくそれが実を結ぼうという矢先に、雇用危機が来てしまった。
――政府の雇用対策をどう評価しますか。
 雇用促進住宅の利用や、生活資金貸し付けなど、連合として要求したことはほぼ実現にこぎつけた。迅速に対応してもらいたい。ただ、今回の対策は、すりむいた後のばんそうこう。政府が企業に雇用調整を慎重にするよう申し入れても、残念ながら経営側に対して大きな影響力は発揮出来ていない。
――09年春闘方針で8年ぶりにベースアップ要求を盛り込みました。
 ベア要求の理由は、物価が上がったから。給料の目減り分を補うのは当然だ。今はベアを求める必然性の高い社会状況、経済状況ということだ。
 経営側は「賃上げよりも雇用安定を」と主張しているが、賃上げしないと需要は戻らず、操業率も上がらないし、雇用は減る。それに対するきちんとした反論は聞いたことがない。「賃上げも雇用も」が当然で、優先順位はつかない。
――各単組や産別労組には「ベア要求は厳しい」という声もあります。
 だから一生懸命に旗を振る。色々なところで経営側と接しているから冷まされている部分はある。ベアの必要性は我々が言い、産別が言い、単組がみんなに言わないといけない。回れというなら、全単組を回ってもいい。
――産別がまとまり闘争態勢をつくる五つの「共闘連絡会議」を立ち上げました。
 お互いを支え合うような関係になるには時間がかかるだろう。ただ、経営者は同じ業界内のことはとても気にしている。だから、お互いに「こっちは10という回答が出てくるまで頑張るから、そっちもそこまで頑張ってくれ」と下相談して交渉すると、だいぶ違う。
――労使協調路線の浸透で本当の意味で闘えるのでしょうか。
 今は経営側に「色々言っているが、突っぱねていれば息切れして妥結する」と高をくくられている。正社員がそこまで追い込まれていないのか、論理的にも経営側に飼いならされたのか。嫌がることもやらないのに組合の主張をのませることはできない。
――経営側への「拮抗(きっこう)力」を取り戻すには。
 要は会社が嫌がることをできるかどうかということ。例えば忙しい時、納期が迫っている時に残業を拒否したら会社には効く。(朝日新聞)

<写真>インタビューに答える連合の高木剛会長=11日、東京都千代田区、林正樹撮影