2010年12月12日日曜日

名古屋競馬、6年ぶり赤字転落へ 廃止論、再浮上の恐れ

 名古屋競馬(名古屋市港区)が今年度、6年ぶりに赤字に転落する見通しになった。馬券収入で地方財政に貢献したのは昔の姿。近年は経営難にあえぐ。日本中央競馬会(JRA)との馬券相互販売や親子向けイベントで「すそ野拡大」を目指す。

■不況直撃 入場者数も減少

 名古屋競馬を運営する県競馬組合によると、今年度の入場者数は10月末までに52万1212人(前年度同期比94.1%)、馬券販売額は74億4957万円(同84.2%)。わずか200万円の黒字だった2009年度の収入を下回るのは避けられない状況だ。

 名古屋競馬は1948年に公営競馬として始まり、これまでに600億円以上を県や名古屋市などに「献上」してきた。しかし、バブル崩壊後の92年度に赤字になり、04年度には累積赤字が40億円超にふくらみ、一時は廃止も取りざたされた。

 人件費を抑えたり、駐車場用地を売却したりした結果、05年度に単年度黒字に転換した。馬券売り場の設置基準を緩和する構造改革特区を国に申請し、名古屋市中区の繁華街に「ミニ場外馬券売り場」を設置。売り上げが伸びた。同年度からわずかながら黒字が続き、累積赤字は約37億円まで縮んでいた。

 再び赤字に転落する危機に、組合の担当者は「リーマンショックによる不況が一番の要因だ」と話す。入場者も、1人当たりの売上金も減った。過去最低だった09年度の1日1万6600円を、今年度はさらに1割以上下回り、同1万4600円にとどまっているという。

 東海地方では笠松競馬(岐阜県笠松町)が赤字で存廃の岐路に立つ。名古屋競馬も赤字転落で廃止論が再び浮上する可能性がある。

■集客へ、子ども乗馬体験も

 経営改善に向け、関係者が期待を寄せるのが、JRAと地方競馬全国協会の馬券相互販売だ。現在はネット上の別々のサイトからしか馬券を買えないが、JRAのサイトから地方競馬の馬券も購入できるようにする。

 名古屋競馬は02年に馬券のネット販売を開始。販売額の割合は、06年度の11%から10年度(10月末現在)の25%へと急伸した。JRAとの連携で馬券の販売チャネルが広がり、売り上げに貢献しそうだ。ただ、システム整備の都合で、相互販売が実現するのは早くても12年からという。

 何とか競馬ファンを増やせないかと、今年度は新たな試みも続けている。今月1日には女性騎手の日本一を決める「レディースジョッキーシリーズ」を開催。レースがない日には、子どもが誘導馬やミニチュアホースに体験乗馬できるイベントも開いている。担当者は「理想を言えば、競馬場に直接、足を運んでほしい。『古い』『年寄りばかり』といったイメージを根本的に変えたい」と話している。(朝日新聞)