2013年2月23日土曜日

福山競馬…再就職めど立たず


 福山市の福山競馬は24日、最後のレースまで残り1カ月となる。あと10日間の開催で騎手や馬券販売などの従事員、関連業者計500人以上が仕事を失うが、再就職のめどはほとんど立っていない。競走馬の行き先も決まらない。関係者には焦りが見え始めた。
 「経験や資格がないと、再就職は難しいと分かった」。馬の世話をしている藤井美幸さん(53)=同市船町=は頭を抱える。
 中学校を卒業後、厩務員になった。7人家族。次女(22)は関東地方の大学に通い、三女(14)はまだ中学2年だ。再就職支援のため市が昨年末、競馬場に設けた総合相談窓口に3回通ったが、条件が合う仕事は見つからなかった。
 訪れたハローワーク福山では、若い求職者の多さに驚いた。「家族をどう養えばいいのか」。そう焦る。
 福山市では昨年12月にシャープの工場で希望退職を実施したばかり。市内の同月の正社員有効求人倍率は0.87倍。求人を求職者が上回る。
 ハローワークの担当者は「競馬廃止で地域の雇用状況はますます悪化する。求人開拓に努めるが、年長者ほど再就職が難しくなりがち」という。71人いる厩務員の平均年齢は46歳だ。
 「競馬関係者の再就職支援に協力をお願いします」。22日、福山商工会議所であった会員企業の会合で競馬を所管する佐藤彰三市財政局長が頭を下げた。未明から働く厩務員らの真面目さに触れ、募集職種や採用人数などの記入欄のある「求人連絡表」を配った。
 これまで市が得た独自の求人情報はタクシー会社など10件。総合相談窓口の利用者数は21日現在延べ151人だが、窓口が関わって就職が決まったのはまだ1人という現実が横たわる。
 市は本年度末で競馬事務局を廃止し、4月からは競馬対策室を新設。関係者の再就職支援や競馬事業の清算に当たる方針だ。
【写真説明】再就職の不安を抱えながら馬にブラシを掛ける藤井さん